from Asia


牛嶋直美の「亜細亜くいだおれ」 その5
ぽーろっぱうの甘い誘惑

n.ushijima
うしじま・なおみ
からだの組成の87%が
チューカでできている
ちゅーか。残りの13%は
タイ、ベトナム、インド料理で
できてるちゅーか。




一時期ひどくメロンパンに凝ったことがあって、当時は周囲があきれるほど、それはそれは毎日メロンパンばかりを食べていた。

メロンパンには、大きく分けて2種類ある。上の皮にあたる部分にクッキー生地をのせ、焼いた食感がガサガサしたものと、周りがマジパンのように甘くしっとりとしたもの。

私は前者のほうが好みだが、ただし中はしっとりとしていてほしい。ある程度の甘みは欲しいが、かといって甘すぎるのもいや。すこしわがままだとたまに思うこともあるが、これは嗜好の問題なので仕方がないのである。

今では毎日食べたくなるほどではないが、やはりときどきどうしても、無性に食べたくなることがある。当然、日本を離れていても、その欲求は抑えられない。が、嬉しいことに、香港にはメロンパンにそっくりなものがある。

パイナップルパン。広東語で菠蘿飽(ぽーろっぱう)という。

これはほんのり甘みのある素朴な菓子パン。上はクッキー生地で、ふっくらと焼いてある。食感でいえば私の好きなメロンパンのほうに似ている。

日本のメロンパンがメロンの香料を入れることがあるのに比べると、パイナップルパンに果物のパイナップルを思わせる工夫はまったくない。クッキー生地で焼いた部分の表面の色とざらざら感から、この名前がついたと聞く。

日本から香港へ友達が来て「ちょっとお茶でも」というとき、私はよくパイナップルパンを食べにいった。パイナップルパンは、日本のメロンパン同様に街のパン屋で売っていることもあるが、基本的に茶餐店(ちゃーつぁんてん)で食べる。日本でいうなら、喫茶店に毛が生えたような店だ。

レストランほど大袈裟なものではないが、朝ごはんを食べる場であり、ランチを食べる場であり、おやつも食べられ、お茶だけでも利用できる。もちろんしっかり夜ごはんを食べたり、さらに夜食を食べることまでできるとても便利な場所。

会社勤めの香港人OLや会社員が、お昼ごはんを食べるのにいちばん利用するのが、実は茶餐店なんじゃないかと思うくらい、それはとてもポピュラーな存在だ。特に昼下がりに訪ねると、香港人の日常的おやつ風景がのんびり楽しめて、一緒に行った香港ずきの友達はみな一様に楽しんでくれた。

席につくと、私は決まってパイナップルパンをオーダーする。メニューはとてもたくさんあるのだが、私が茶餐店メニューですきなのは、午後のすいてる時間帯にゆっくり座って楽しむパイナップルパンなのだ。パンはときどき温めてもらったり、横ふたつに割ってバターをはさんでもらったりする。

しかし困ったことに私の広東語はかなり怪しく、ときどきまったく通じないことがあって、よく店の人を困らせた。そういうとき注文を聞きに来るおじさんやおにいさんたちは、私を厨房やベーカリーのなかまで連れて行き「欲しいものを指差せ」という。

おかげで私はいろんな茶餐店の厨房を覗かせてもらうことになった。そうしてますます私は、香港の食にハマるのである。


ぽーろっぱう

パイナップルパンでおすすめの茶餐店

檀島咖啡餅店(だんとうがーふぇいぴんでぃむ)
中環(ちゅんわん=セントラル)や灣仔(わんちゃい)にある、老舗の茶餐店。パイナップルパンは、普通のと、加牛油(がーんがうやう=バター入り)とがある。普通のは頼めば温めてくれる。蛋撻(だんたっ=カスタードタルト)や、蛋巻(だんぎゅん=ロールケーキ)もおいしい。そのほか、固くコシのある麺も人気がある。



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