from Asia


牛嶋直美の「亜細亜くいだおれ」 その8
おもしろ食材さんこん、とうふーぼう

n.ushijima
うしじま・なおみ
からだの組成の87%が
チューカでできている
ちゅーか。残りの13%は
タイ、ベトナム、インド料理で
できてるちゅーか。




香港の家庭料理には、日本の家庭料理によく似た料理がある。

例えば肉ジャガそっくりの鶏ジャガ。皮と脂肪分を取り除いた鶏肉をジャガイモと一緒に煮込み、生抽(さんちゃう)という中国醤油で味付けしたもの。味も体裁も、かなり肉ジャガに近い。鶏ジャガという名は、この料理に広東語で特別な名称がないため私が勝手につけた。

世話になっていた温(わん)家では、リサ姐(りさつぇー=一番上の姉がこうよばれていた)がときどき思い出したように鶏ジャガを作った。「これは日本の肉ジャガか」と聞くと家族は首を振り、「香港に昔からある家庭料理だ」といった。

鶏ジャガは温家でごく普通に食べられていたが、香港の家庭料理が食べられるといわれる他のどの店でも食べた記憶がない。温一家を信じないわけではないが、実はいまだに少し疑問が残るメニューである。

同様にフツーの家庭の食卓にしょっちゅう登場するのが「鯇魚」(わんゆぃ)という川魚の蒸しもの、油菜(やうちょい)、そして漢方スープ。日本でいえば、焼き魚、青菜のお浸し、お味噌汁といったところ。

鶏ジャガに比べるとこちらはかなりポピュラー。ファストフードの店でも、ランチや夕飯のメニューで気軽に食べられるほど一般的なものだ。

香港へ遊びに来た日本人の友人は、リピーターになるほど、なぜか家庭料理に近いものを食べたがった。そこで、私もなるべく「実際の香港人の食卓」に近いメニューを探すことになり、そのうち、不思議なほど、ほとんどの人に人気のある食材に気づいた。

山根(さんこん)と豆腐ト(たうふーぽう)である。

山根は小麦のグルテンを丸めて油で揚げたもので、直径5cmほどの球状をしている。調理前はカチカチで固いが、それも強く握るとばらばらに壊れる程度。火鍋(ふぉうぉ=香港風しゃぶしゃぶ)の具にしたり、煮込みにして食べる。

豆腐トは日本でいう油揚げ。一辺が3cmほどの正方形をしているので、日本人には一見厚揚げに見えるが、食べてみると食感も味も油揚げそのもの。焼いたり煮込んだり火鍋に入れたりと、使い方も日本の油揚げにそっくりである。

これらはいずれも街市(がいしい=公共の市場)の豆腐屋で売っているので、興味があればぜひ見学を。

山根は豆腐トに比べて皮が薄く、調理をすると中の空気が抜けてしぼみ、やわらかくしわしわになる。揚げてあるため香ばしく味もよく染みて、味付け次第で、ごはんのいいおかずになる。原料はお麩と同じグルテンだから、そうそう変わった食材でもないはずだが、真ん丸という見た目のおもしろさや、その名前の印象もあってか、一度食べると誰もが忘れないのだ。私の周囲には、とてもファンが多かった。

以前、成田の税関で聞いたところ、山根を日本へ持って帰ることは可能。料理好きは、ぜひ一度試してほしい食材。ただし街市で買うとき、袋が油まみれになっていることが多く、また強い圧力に少々弱いので、パッキングには少し工夫が必要。


四角い、茶色っぽいのがたうふーぼう。
色が薄くてうにゅうにゅしているのがさんこん

煮込んだ山根が食べられるお店

東寶小館(とんぽうしうぐん)
北角(ノースポイント)街市(がいしい=公共の市場)の2階(日本でいう3階)にある広東料理のレストラン。広東語しか通じないけど、ここで「山根、豆腐ト」と書いて見せれば、ちゃんと上の写真の料理が出てくるはず。

酔湖海鮮酒家(ちょいうーほいしんちゃうがー)
灣仔(わんちゃい)にある広東料理店。「蝦子山根豆腐」(はーじーさんこんたうふー=山根と素揚げした豆腐の蝦子煮込み)など家庭料理が有名だが、このメニューに関していえば、蝦子(はーじー=蝦の卵)はちょっと生臭く感じるので、苦手な人もいるかもしれない。クセの強いものが好き、という人にオススメ。


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