「亜細亜くいだおれ」 October 27,1998
ふぉうぉ、香港式寄せ鍋

牛嶋 直美
ウシジマ・ナオミ
からだの組成の87%がチューカでできているちゅーか。残りの13%はタイ、ベトナム、インド料理でできてるちゅーか。
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火鍋(ふぉうぉ)は、しゃぶしゃぶにも似た香港の寄せ鍋。テーブルの真ん中に置いた鍋を、家族がぐるりと囲み箸でつつく様子は、日本の食卓にも通じる光景だ。

亜熱帯気候で日本ほど四季の温度差はないが、街中に大閘蟹(だいちゃっはい=上海蟹)があふれる秋になり、さぶい風がぴゅうと吹くと、人々は「今日はあったかい火鍋が食べたいねぇ」と口々に話し出す。地下鉄の階段でそんな街の声を耳にするとき「人の欲求って、どこでもあまり変わらないのかも」とよく思った。

「香港風火鍋」というと、日本の雑誌やテレビ番組では「鴛鴦」(ゆんよん)スープを紹介することが多い。これは真ん中のしきりでふたつに分かれた鍋に「上湯」(しょんとん=チキンスープ)と「沙爹湯」(さーていとん=辛いサテスープ)という、2種類のスープを入れたもの。

そのせいで「鴛鴦」が香港での主流と思われがちだが、じつはこの他にも「四川麻辣湯」(しーちょんまーらーとん=四川風の辛いスープ)や「泰式冬蔭湯」(たいしっとんやんとん=タイ風トムヤムクンスープ)、上湯だけのものなど、いくつも種類がある。鍋は店によってまちまち。1種類のスープでも、ふたつに分かれた鍋を使うこともある。

日本の家庭に土鍋があるように、香港の家庭でも火鍋用の鍋を常備する。私は鍋フェチで、珍しい鍋、しかも「香港の家庭で常備する鍋」となると黙っていられない。鴛鴦鍋は何年も前から入手していたが、昨冬、3つに分かれた珍しい鍋を九龍灣(がうろんわん=カオルーンベイ)のディスカウントショップで見つけ、速攻で購入した。

後者は香港人からも「珍しい」といわれ得意になったが、実際に家で3種類のスープを使って火鍋をしたら、なんだか妙に使いにくく、がっかりした。

香港には在住日本人による「パソコン研究会」があって、私はパソコンをゼロからここで習った。「パソコンは自分で組み立てるもの」「HTMLはエディタで書くもの」と、やや日本とは違う概念を教えていただいた。毎週難しい内容は聞いてもほとんどわからなかったが、終了後の食事会はとても楽しかった。

月に1度は火鍋を食べに行った。大勢で食べる火鍋はことのほかうまく、相当にクセになった。今も毎週みんながこんな楽しいことをしているのかと思うと、非常に悔しくなることがある。

さて、当時オーダーしたメニューの一例はこうだ。

スープは香莞皮蛋湯底(ひょんゆんぺいたんといでい=香菜とピータンのスープ)か花彫鶏湯(ふぁーてぃうがいとん=枸杞の実、當参などの漢方薬と、花彫酒に漬けた鶏肉で出汁をとるスープ)。

具は牛肉(んあうよっ)、白菜仔(ぱっちょいちゃい=小さい青菜)、西洋菜(さいよんちょい=クレソン)、山根(さんこん=小麦のグルテンを揚げたもの)、韮菜餃(がうちょいがう=ニラ餃子)、墨魚丸(まっゆぃゆん=イカ団子)、豆腐(たうふー)、紫菜(じーちょい=のり)、茘芋(らいうー=タロイモ)、腐皮(ふーぺい=ゆば)、金磨iかむくー=えのきだけ)、鮮冬磨iしんどんくー=生シイタケ)。

つけだれは、生抽(さんちゃう=ショウユ)、辣椒醤(らーちうちょん=チリソース)、XO醤(えっくすおーちょん=干し貝柱をベースにした辛い調味料)、ワサビなど。ワサビは、粉末を水で溶いたもので、しかも小皿に山盛りにされるため、一部の繊細な日本人には不評だが、私はわりとすきだった。ショウユで溶き、野菜やイカ団子をつけて食べる。タロイモにもワサビがよくあう気がした。

スープが沸騰すると、すきな具を入れ、頃合いを見計らって食べる。ルールはそれだけ。具を入れすぎて、鍋のなかが大混雑になると火が通りにくくなるが、それもまた楽しいもの。ただひとつ気をつけなければいけないのは、イカ団子や餃子、内臓類は特に、きちんと火が通ってから食べるということ。でないとお腹をこわして、せっかくの旅が台無しだ。

具を食べ終わった後は、よく出汁の出たスープに麺を入れ食べてしめるのが香港流だが、パソ研で教わったのは、香港流のおじや。日本同様、白飯(ぱっふぁん=ごはん ※ほとんどタイ米)を頼み、残ったスープにぶちこんで溶き卵でとじる。おいしく食べるコツは、具はすべて取り出してしまうこと、煮詰まったスープをお湯で薄めないこと。

上記2点を守りさえすれば、これがまた、うまいのなんの。


紫菜(じーちょい=ノリ)と花彫鶏湯(ふぁーてぃうがいとん)

火鍋のおいしいレストラン

英記海鮮火鍋酒家(いんげいほいしんふぉうぉちゃうがー)
銅鑼灣にある火鍋のおいしいレストラン。ここの火鍋素材メニューには、珍しく炸茘芋(じゃーらいうー=素揚げしたタロイモ)があった。ほとんどが地元客。英語メニューはなし。広東家庭料理もおいしいので、火鍋以外でもおすすめ。

徳興火鍋海鮮酒家(たっひんふぉうぉほいしんちゃうがー)
火鍋のスープが特においしいと地元で評判の大手レストランチェーン。早朝から15時くらいまでは飲茶も食べられる。火鍋は18時から。銅鑼灣(とんろうわん=コーズウェイベイ)、尖沙咀東部(ちむさあちょいとんぽう=チムサアチョイイースト)、佐敦(じょーどん=ジョーダン)などにある。


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