「亜細亜くいだおれ」 November 10,1998
上海料理も香港で

牛嶋 直美
ウシジマ・ナオミ
からだの組成の87%がチューカでできているちゅーか。残りの13%はタイ、ベトナム、インド料理でできてるちゅーか。
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香港といえば広東料理だが、じつは上海料理も結構イケてると私は思う。

素人目にもわかりやすい違いは素材で、例えば広東料理が米を主食とするのに比べ、上海料理では小麦がメイン。小籠飽(しうろんぱお)や、皮がむっちりした餃子(がおじー)、生煎飽(さんちんぱお=焼き饅頭)などが有名。厳密にいえば上海で食べるものとは似て非なるものだが、これらは香港の上海料理店で気軽に食べられ、香港人にも意外に人気がある。

野菜や調味料にも、その違いは顕著だ。

お肉も食べるが精進素材(つまりお豆腐やら野菜類)はもっとすきで、レストランのメニューでは、いつでも「蔬菜」(そちょい=野菜)の欄を熱心に見た。

広東料理店では、「油菜」(やうちょい)だの「清炒時菜遠」(ちんちゃうしーちょいゆん)だのと呼ばれる、いわゆるシンプルな青菜炒めを食べることが多かった。豆腐料理もあるが、大抵は生のものを調理して食べるものが一般的。

香港でそれを「普通」と考えるなら、上海料理の素材はすこし独特。そのなかで私のお気に入りは、雪菜(しゅっちょい=からし菜に似た青菜の漬物)、百頁(ぱっぺい=薄く押しつぶした豆腐)、冰豆腐(ぺんたうふー=日本でいう高野豆腐)、そして毛豆(もうたう=枝豆)だった。

枝豆は変わった食材ではないが、私にとっては非常に思い出深い素材なのだ。

中学1年の夏。友達3人とプールで遊んだ帰り、四谷のホテルニューオータニの地下にあった中国料理店で、父親にラーメンをおごってもらった。そのラーメンの名前は忘れてしまったが、子供心にも衝撃的なほどおいしく、だいぶ長い間その味が忘れられなかった。いまでも思い出すと、ほのぼのとしあわせな気持ちになるほど。

定かではないが、私の記憶の中でそのラーメンは中国人が作っており、ラーメンの具で最も印象的だったのが枝豆だった。当時の私にとって、枝豆は麦茶と一緒にそのまま食べるもので、調理するなど考えもよらなかったからだ。

しかもそれは、本当においしかった。

雪菜などの漬物は、日本のからし菜にそっくりだが、ごはんのおかずとして食べるのでなく、料理の味付け、つまり調味料として使うことが多い。これは野菜だけでなく、鹹肉(はむよっ)という豚肉の塩漬けについても同様だ。肉そのものを味わうより、肉を出汁に、スープを味わうことが多い。確かに、そのほうがずっと贅沢な食べ方で深い食べ方という気がする。

さて、上海料理といえば麺も忘れられない。日本の太いラーメンを食べ慣れている舌には、香港では、香港風より上海風の麺がおすすめだ。

「雪菜肉絲麺」(しゅっちょいよっしーみん)は、雪菜と豚もも肉、タケノコの細切りを炒め、麺の上にのせたもの。雪菜には、浅く漬けた緑色が鮮やかなものと飴色の古漬けがあって、「雪菜肉絲麺」には古漬けを使うことが多い。

「豬扒麺」(じゅーぱーみん)は、カレー風味で揚げ焼きした骨つき豚肉をのせたスープ麺。店によって差はあるが、だいたい揚げたてのあつあつがのってきて、それはそれは香ばしく美味である。

「豬扒麺」は、店によっては「排骨湯麺」(ぱいぐわっとんみん)という名で紹介されることもある。


鹹肉冰豆腐湯(はむよっぺんたうふーとん)

香港の上海料理が味わえる店

上海緑楊邨酒家(しょんほいろっよんちょんちゃうがー)
銅鑼灣の貿易中心ビルにある上海料理店。こぎれいなお店で、油断すると魚翅(ゆぃちー=フカヒレ)だの石斑(せっぱん=ハタ)だのを薦められるけど(確かにおいしーよ)、それは丁寧にお断りして、家庭料理風のお惣菜を。おすすめメニューは緑色の文字で書かれているのでわかりやすい。ぜひ試してみて。

唯一麺家(わいやっみんがー)
上海風の麺専門店。豬扒麺が、簡単に食べられる。豬扒は、揚げたてあつあつの確率高し。むっちりした皮の焼き餃子(ちょっと油っぽいけど)と一緒に。灣仔(わんちゃい)、尖沙咀(ちむさあちょい)、荃灣(ちゅんわん)などにある。




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