| 「亜細亜くいだおれ」 November 24,1998 | |||
| 美肌になりたきゃ燕の巣 | |||
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「きれいな白い肌になりたい」とは誰もが願うこと。ただしその対処法、つまりスキンケアの方法や考え方は、日本と香港で随分と差があるように思う。 日本同様、香港でもコラーゲンだのフルーツ酸だのを配合した、保湿や、角質をとる化粧品、ホワイトニングなどの人気は高い。でも、香港では、それよりもずっと「体のなかからきれいになる」意識が強いのだ。 「内臓の病気はすべて肌に表れる」という考えは、とても一般的だ。肌がきれい=健康。だから「肌にいい」食べ物は老若男女限らず、本当に人気がある。 例えばニキビができると「体に熱や毒素がたまっている」と、亀苓膏(くわいれんこう=亀ゼリー)や漢方スープなど、解熱作用・解毒作用のある食べ物をとる。また、寝不足などで目の下にクマができると「肝臓が弱っている」からと、肝臓の働きをよくするという川魚のスープを飲む。 弱った体を健康にするだけでなく、「よりきれいになる」ためにとるものもある。 それが、燕(つばめ)の巣だ。 この燕の巣、春に日本へやってくる燕が家の屋根の下に作る、ワラだの小枝でできたものとはちょいと違う。原産は、タイやインドネシア。海辺の断崖(だんがい)にできる海燕の巣が、その貴重な食材である。 巣の材料は、海辺に打ち上げられた海藻など。燕はこれらをしっかりとかみ砕き、だ液とよく混ぜ合わせて粘性の材料に変え、長い長い時間をかけて少しずつ巣を作る。燕がひとつの巣を作るのに、1ヵ月近くかかるという。 燕の巣の専門店のチラシによると、その効能は以下のようだ。 「100gのツバメの巣のうち80gが良質のたんぱく質。これは人の体を作る主要成分のひとつで、生命のもととなるものである。肺の機能を高め、せきをとめ、たんをとる。婦人科系の病気に万能であり、食欲を増進し、美肌にはてきめんの効果がある」 他の店の店主がいうには、燕の巣は皮下細胞に直接栄養分を与えるため「肌そのものが活性化されてツルツルになる」とのこと。楊貴妃も好んで食べたといういわくつきの食材で、さらに美白作用まであるそうだ。 お金持ちの香港マダムが、美容のために「こぞって燕の巣を買いあさる」といううわさも、あながちうそではないかもと想像した。 燕の巣を食べようと店に通う人がそんなにたくさんいるかと思うと、単純な私としては、週に一度はここへ通い、中国4000年の歴史に基づいて肌をつるぴかにすることを固く決意するのに時間はかからなかった。 そうはいっても高価な食材。普段はくずのように細かい燕の巣が入った18香港ドル(約320円)のお粥(かゆ)を食べてばかり。友達が日本から来るときだけやたら太っ腹になり、260香港ドル(約4700円)もする燕の巣のデザートを食べるため、何度も上環(しょんわん)まで通った。 そのデザートの名前は「原隻燕窩燉冰糖」という。器一杯につき、巣をまるごと一個分を使っているという。 このメニューに使う燕の巣は、インドネシア産の養殖もの。養殖とはいっても、実際に作るのはもちろん燕さまだ。養殖とはつまり、通常、岩燕が巣を作る海辺の断崖絶壁ではなく、もっと簡単に採取できる場所に巣を作らせるのが目的で、屋内に木の柱を組み、燕をそこへ放しておくのだ。 私は燕が貴重な巣を作るその過程を、店主が自分で撮ってきたというビデオで見せてもらった。養殖とはいえ、燕が巣を作る期間も手間も、また商品化するまでの過程も同じ。養殖もののほうが、ごみが少ない分きれいに見える。 そして最良のものは、タイ産の天然ものである。 天然ものは、色も一色でなく、白、ベージュ、赤といろいろ。赤いものは、よく燕が血を吐きながら作る「幻の燕の巣」などといわれるが、それは眉(まゆ)つば。 確かにその色から「血燕窩」などと呼ばれるが、それは名前だけ。色の違いは、燕が巣を作るときの材料になる成分に差があるのだ。天然ものはミネラルの量がはるかに多いそうだ。 そんな燕の巣にも、美容という意味では、ひとつ困ったこともある。内臓の働きがよくなるため、食べたものの栄養素が吸収されやすくなり「太る」ということ。 香港で太ったのは「燕の巣のせいだったか」と、すこし逆恨みする私であった。
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