| 「亜細亜くいだおれ」 February 2,1999 | |||
| 旧正月のおめでた料理 | |||
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香港のレストランにはやたら「おめでたいメニュー」というものがあって、それらは結婚式などの宴席や、旧正月明けの新年を祝う席で食べられる。 もちろん食べ物自体がおめでたいわけではなく、単に料理の名前がおめでたいということ。中国料理で鶏肉を「鳳凰」と名づけることは日常で、そういう意味ではもともと大袈裟な印象もあるが、めでたい席の料理にはまた、そんなひとことではいい表せない違うおもしろさがある。 例えば結婚式で多用される言葉は「紅」(ほん=赤)。 赤は香港人にとってとても縁起のいい色。だから結婚式の宴席メニューは、いつでもどこでもこの字であふれかえる。「紅焼」(ほんしう)は醤油で煮込んだフカヒレや、醤油で色付けした子豚の丸焼きなどに使われる言葉で、普通のレストランでもよく食べられるメニューだが、これを「羅列する」のが、おめでたいメニューのあり方。 客人たちは湯気を立てて出てくる赤々とした料理(日本人にはどっからどう見ても茶色だけど)の数々に、食欲をそそられ、「やー、めでたいねえ」と、胸をときめかせる。日本では醤油といえば「むらさき」だが、香港では、おめでたい「紅」(ほん=赤)の象徴と考えるのが一般的。 また、旧正月にはレストランで相応のおめでたいコースメニューが用意される。そのなかでも非常に香港を象徴して、私も大好きだったのが「發財好市」(ふぁっちょいほうしー=意味は、商売がうまくいって、お金がたくさん儲かる)。これはよく似た発音をする「髪菜蠔豉」(ふぁっちょいほうしー=髪菜と干し牡蠣の蒸しもの)という料理の、いわゆる当て字の料理名。 「髪菜」(ふぁっちょい)も「蠔豉」(ほうしー)も、中国料理ならではの高級乾物(フカヒレや燕の巣ほどではないけれど)である。 髪菜は流れのある淡水に生える藻の一種で、乾燥している状態だと1本が本当に髪の毛のように黒々として細く、その形状からか「髪が黒々と豊かになる」という薬効も信じられている。水で戻して使うが、それ自体に味はほとんどなく、味付けをして煮たり蒸したり揚げたり、またスープの具にして食べることもある。 「蠔豉」は、オイスターソースを作るときに残った牡蠣を茹でて干したものだそうだ。非常に香りが強いため、好みは分かれるようだが、癖になるとこれがやめられないおいしさ。とにかくいい出汁がでる。 私が初めて香港を訪れたのは1981年だか82年頃のこと。当時、中国料理についてはほとんど知識を持たなかったが、そのときに「自分のおみやげ」として買って帰ってきたもののなかに、髪菜と蠔豉があった。その他に買ったのも、なぜかそのほとんどが乾燥食材。これらを手で触れ、匂いをかいだとき、真面目な話、私にはなぜか宝物に感じたのだった(※髪菜にはほとんど匂いはない)。 日本へ帰って、すぐ図書館へ行った。しかしどんなに調べても、結局調理方法は見つけられなかった。仕方なく自己流で適当に戻し、料理をしてみた。ほとんど料理というより実験という印象。 それでもどうにか料理っぽい様相になって、とりあえず食べてみた。おいしいものもあったけど、ひどくまずいものもあった。袋に残った乾物のいくつかには虫がわいたので、最後は結局捨ててしまった。今考えるとひどく無駄なことをしたものだ。 ところで、こんな風にものを書いていてときどき思い出す過去の旅の記憶のほとんどが、食べ物にまつわる出来事ばかり。他には思い出がないのだろうか。なんだかさすがにすこし恥ずかしい今日このごろ。
![]() 「發財好市」(ふぁっちょいほうしー) 髪菜と干し牡蠣と干し貝柱の蒸しもの。店によっては、彩りに「豆苗」(たうみう=えんどうの芽)、こくをだすために「焼肉」(しうよっ=こんがりローストした皮付きの豚肉)、「冬磨v(どんくー=干しシイタケ)を使うことも。素材ごとに違う味が楽しめるが、なかでもいろんな材料のうまみをじんわりすった髪菜が抜群にうまい。
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