| 「亜細亜くいだおれ」 March 16,1999 | |||
| 一転、ソウル1のネンミョン | |||
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先週の出張時に食べた、ソウルのデパ地下(※デパートの地下)グルメのオハナシ。 以前、友人で韓国人料理研究家のTさんが「ソウル一おいしい冷麺(ネンミョン)」と勧めてくれたのが「ハンソルネンミョン」。これは狎鴎亭洞(アックジョンドン)の現代百貨店地下にある「冷麺専門店」。冷麺はもともと寒い冬に温かい部屋で食べるものと聞いていたため、季節はずれの雪が降った日、「どーしても食べたい」とワガママをいって再び連れていってもらった。 「ハンソルネンミョン」の社長は2代目。 「うちの会社は冷麺を研究して60年の歴史があるんです」と店長のシンさん。だからこそ「ソウルでいちばんうまいわけです」と笑顔で話す。食事時間には長い行列ができるほどの人気店だが、「味に責任が持てないから」とあえてチェーン店は作らず、現在もデパ地下だけ2店舗だけの展開。不況にもびくともしない原因はこの「正直な商売」のせいと胸を張る。 ちなみに「ハンソル」とは、大きな松の木を意味するハングル語。韓国で松は、薬効が強く信じられる特別な木だ。それも含め、「いつも青々とした葉で長持ちするように」という願いを込めてつけられた名前という。 この店の麺は、半分がそば粉、あとの半分にはドングリ・サツマイモ・ジャガイモ・トウモロコシの粉をミックスして使用している。ただしその割合は、企業秘密。 練った麺のたねはマシンのなかに入れて圧力をかける。たねが細い穴を通り極細麺ができた瞬間、下に設置された大鍋の、ぐらぐらと煮立った熱湯へ落とされ、麺は一気に、一瞬で茹で上げられる。カウンターのなかをちょっとのぞけばその一部始終が見え、厨房は非常に狭いが、客の目をごまかしようのないそのパフォーマンスは概ね好評である。 メニューに載っている冷麺は以下。 ひとつが「水冷麺(ムルネンミョン)」。いわゆる日本でいう冷麺がこれで、もともとは北朝鮮の平穣(ぴょんやん)で生まれたもの。辛い唐辛子味噌であえる「ビビン冷麺(ビビンネンミョン)」はハムンという地方が発祥の地。そこで別名を「ハムン冷麺(ハムンネンミョン)」という。店ではこの2種を基本に、好みでエイのお刺身や牛肉をミックスしたものがプラスされる。 どちらにももれなくついてくるスープは、「プリスケ」という牛肉を煮込んだときの汁で、冷麺にはこのプリスケの薄切りを具に加える。スープは超薄味だがコクがあってうまい。このまま飲んでもいいし、ごはんを入れておじや風に食べる人もいる。 韓国ではどの店でもチョッカラッ(韓国の金属製の細いお箸 ※他の素材のものもあるがたいていはこれを使用)とスッカラッ(スプーン)で食事をする。日本の軽くて太い箸に慣れている私には少々重く使いにくいが、毎日使ってればそれもどうにか使えるようになるものだ。 だが、この店でどうしても慣れないことがある。 店に入ってテーブルへ座りオーダーをすると、冷麺が出てくるまでに約5分。すると、すぐにオンニ(おねえさん)がやってきて、人の丼のなかへおもむろにハサミを突っ込み、きれいに並んだ具を下からひっくり返し、なかの麺をバシバシバシッと思い切り切り刻んでしまうのだ。いや、それ自体はまったく問題ない。そのほうがずっと食べやすいわけだし。 問題はその時間。タイミングだ。 私はどこへ行っても食事時に、必ずデジカメを持参する(忘れることもあるけど)。そしてごはんを食べる前の「美しく盛り付けられた状態」でなるべく撮影をするわけなのだが、ここではその作業がたいへんむずかしいのだ。 もちろんこの店はリピーターであるからして、そんな状況は最初からわかっている。一応、冷麺が来たらすぐ撮れるようデジカメの準備をするはずだった。計算外だったのは、5分待たずに冷麺がきてしまったこと。案の定、間髪入れずにハサミを持ったオンニがやってきて、私が覚えたてのハングル語、「チョンカマ キダリ チュセヨ(ちょ、ちょっと待って〜!)」を試す間もなく、バシバシバシッと潔くやられてしまったのだった。 というわけで、写真はオンニに負けてバシバシされた直後の冷麺。 オンニは皆とても親切で、日本人と見ると、すぐに食べ方を教えてくださる。この店の冷麺は、お酢とマスタードをちょと加えるのが基本的な食べ方。そう、つまりバシバシした後、すぐにテーブルの上のお酢をチュー(プラスチック容器のため)とやられ、目の前の事態を理解する間もなく、さらにゆるめのマスタードをチューとやられてしまうのだ。 これで済んだと思ったら大間違いで、食べる前がまた肝心。麺を口に入れるには、丸く塊になっている麺をすべてほぐすことが必要で、これが済むまではなかなか落ち着いて食べられない。親切なオンニがやってきて、きちんとほぐすことができるまで、ジッと監視されるからだ。小心者の私は、オンニが笑顔になるまでひたすら麺をほぐし、どんなにお腹がすいていてもなかなかすぐには食べられないのだった。
![]() ネンミョンはいずれもW5500(約¥550)。エイのお刺身入りだとW6000(約¥600)になります。
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