| 「亜細亜くいだおれ」 April 27,1999 | |||
| 7つ星ホテルの2つ星 | |||
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星の数が多くなればなるほど、ホテルの評価は上がるもの。今回の出張先であるここハワイでも、もちろん例外じゃない。そんなわけで今日は7つの星をもつホテルのお話。 オアフ島の高級住宅街カハラ地区に建つ、カハラ・マンダリン・オリエンタル。テレビドラマ「ホテル」の舞台になったことでも知られ、ホテルそのものの評価は5つ星(ホントはダイヤモンドで評価されるという噂もあるが、固いことはいいっこなし)だが、じつはこのホテルにはあと2つ、相当に魅力的な「星」が控えている。 そのひとつ、6つ目の星がイルカのホクだ。 敷地内に人工のラグーンがあり、ここには3頭のイルカが住む。元々の所属はシーライフパークで、彼らの日々のお世話をするドルフィントレーナーも同パークからの派遣。現在ここにいるイルカは、マカ、カイコオ、ホク。毎日3回のショーがあり、彼らの活躍ぶりは、その時間に合わせて行けば誰でも気軽に堪能することができる。 イルカたちはとても人なつっこい。誰かがラグーンの通路を歩くと、すぐに近くへすり寄ってくる。目が合うと、何度も何度もこちらへ向かう素振りを見せるので「わ、私がわかるんだ」という嬉しさがこみあげ、客はすぐにイルカの虜。「すべては人間の都合による、厳しいトレーニングのたまもので」という見方もあるだろうが、私のように単純な人間は、あのイルカのかわいいお目目に見つめられただけでしやわせの骨頂。我ながら相当におめでたい。 滞在中、私はこの通路を通りイルカと目が合うたび、胸がきゅんと締め付けられた。それは何度もラグーンへ飛び込みたい衝動にかられたほど。当然そういう行為を禁止する看板は出ており、私も仕事中だったのでさすがに思いとどまったが、オフで時間があったらどうしていたかわからない。いや、絶対危なかったと思う。 ![]() 3頭のイルカは、人間と同じようにそれぞれの個性を持つ。 マカは28歳。このラグーンに住んですでに20年と長く、事実上このラグーンを仕切るボスだ。社会的な地位、というのかどうか、とにかく他の2頭に一目置かれた存在。「つまり大人の男だね」と、ドルフィントレーナーのマイケル・オズボーンさんは笑う。ちなみにマカの出身は、メキシコ湾だそうだ。 カイコオは18歳。おとなしいタイプだが、やんちゃなホクと大人のマカの間をうまく取りもち、3頭のイルカ社会をスムーズに運ぶ重要な役割を果たしている。 ホクは8歳。このラグーンで生まれた唯一のイルカだ。若いせいもあって、3頭のなかではいちばん活動的。好奇心が旺盛で、いつでもいろんなことを覚えたがり、試してみたがるワンパク坊主。ホクの誕生日は3月30日で、それは星のきれいな満月の夜だったそうだ。そんな理由から、ハワイ語で「星」(もうひとつの意味が「夜空に輝く満月」)を表す、その名前がつけられたという。 ラグーンを見降ろす場所に、このホテルのメインダイニング「ホク」がある。それが、このホテルの7つめの星だ。 ホテルが閑静な住宅街に位置するため、宿泊客の他には、周囲の高級住宅街に住むカハラマダムたちの集まりや、ワイキキの喧騒を避けたエグゼクティブたちのビジネスランチによく利用される。そのせいか客の年齢層はやや高めだが、だからといってそれほど気取ってるわけでもなく、ハワイらしいオープンキッチンの店内には、キャップをかぶった調理人たちがきびきびと動く。 料理長は、日系3世のウェイン・ヒラバヤシさん。NYハイドパークの小さなコーヒーショップからスタート。紆余曲折を経て、シンガポールのラッフルズ、ロスとラグーナニゲルのリッツカールトン、ワイキキのハレクラニと、錚々たるホテルのダイニングを経験し、ホクのチーフに迎え入れられた。シャイな笑顔はまるで日本人のようだが、じつは日本語はまったくダメ。 「洋服と同じで、料理にも流行がある。新しい食材やスパイス、調理法が出るとそれに皆すぐに飛びつくけれど、やがてそれにも飽きて必ずまたシンプルなものに戻る。今のハワイは、これまでで最もシンプルなものが求められてますね。技術は地域を限定せず、世界中のものを取り入れてきています。逆に素材はますます地元のものを大切にしていますけど」 少し前までハワイはパシフィックリム(=環太平洋料理。そもそもロスやサンフランシスコでブームになったカリフォルニア・キュイジーヌが、ハワイの食材とアジアのスパイスや調理法をミックスして確率した料理)や、ユーロエイジアン(その名の通り、ヨーロッパとアジアの料理の融合)全盛だったが、最近その言葉を否定する料理長が増えている。ウェインさんも、そのひとり。 その言葉を単純に表現すれば「世界中の調味料と調理法を、ハワイの食材とミックスさせて作る料理」。新しいハワイアンキュイジーヌは、素材以外の部分で、地域をますます限定しなくなった。そのため「ホク」のキッチンには、日本風のスシバーを備え、イタリアン ピッツァオーブン、火力の強いチャイニイーズオーブン、ハワイ産ケアウィの薪を使って焼くレギュラーオーブン、そしてインディアン タンドーリオーブンまでをも設置している。 じつはそれは悪く言えば「節操がない」証拠かもしれない。けれど私はこの7つめの星(=ホク)で、ウェインさんが国境のない調理法を駆使し、またさらに次の新しいハワイアンキュイジーヌを生み出す可能性を信じ、楽しみに待ってみたいなあと思うのだ。 遥か遠く、夜空にまたたく美しい星を見ながら、ね。
![]() 「ホクス サンプラー」は、刺身の盛り合わせ。 和風にも見えるが、これもいわゆるひとつの ハワイアンスタイルなのだ。
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