「亜細亜くいだおれ」 August 17,1999
澎湖島のタコとサバでダシをとると

牛嶋さんのイラスト 牛嶋 直美
ウシジマ・ナオミ

からだの組成の87%がチューカでできているちゅーか。残りの13%はタイ、ベトナム、インド料理でできてるちゅーか。
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澎湖島(ぽんふーたお)は、台湾本島の東側に浮かぶ離れ小島。

台湾でその名は、特別おいしい魚の産地としておなじみ。町中の海鮮レストランは、こぞって「魚介類は澎湖島直送!」をうたい、客はそれを見て新鮮な海鮮料理への期待に胸を躍らせる。いわば、台湾を代表する海産物のブランドだ。

島は64の群島からなる。人口は約9万人。全島の標高は40m以下で、川ひとつなく、荒涼とした印象が強いようす。台湾海峡の中央に位置し、平坦な地形の土地には常に強い風が吹くそうだ。

高雄で澎湖島料理の店を経営する黄富民さんは、この店の三代目。「蟹之屋」(※意味は「蟹の家」)という、まるで蟹専門店のような店名は、初代に当たる祖父が特に蟹料理を得意にしていたことからついた。オープンしたのは約30年前。「当時は台湾で初めての澎湖島料理店だったんです」。現総経理である彼は胸を張って話す。

黄家が経営するレストランは、もともと澎湖島にあった。そこは富民さんの祖父と父の故郷。自分たちの生まれ育った島の海鮮料理が、ひとつのブランドとして認知される現在、故郷に対する思い入れがますます深くなるのは充分うなずけるというもの。

澎湖島近海で獲れる魚が特別おいしいのはなぜか。その理由を聞くと、こんな返事が返ってきた。以下は、初代から子と孫に伝えられる話。

台湾本島には高山を源流とする川がたくさんあり、淡水が海に大量に流れ込むので、海水がぐんと薄まってしまう。ところが澎湖島があるのは、流れも厳しい台湾海峡ど真ん中。島には川がひとつもないので淡水は流れこまず、島周囲の海水だけは濃いまま流れていく。そのため、ここで生まれて育った魚は台湾で一番(ということは世界で一番!とのこと)おいしいのだそうだ。強い日差しと適度な風は、干物を作るにも非常に恵まれた環境という。

「本当かどうかはわかりませんけどね」孫の富民さんは、笑顔で結ぶ。

調べたところ、実際はどうも、台湾海峡には栄養塩やプランクトンを豊富に含む親潮の支流が流れ込むからという説が有力だが、私はこの初代の話がすっかり気に入ってしまった。

さて、今回富民さんが特別に薦めてくれた澎湖島の家庭料理は「石咾菜酸」(魚の頭とキャベツの漬物の炒めもの)、「石巨干湯」(タコとネギのスープ)、「米苔目」(お米で作った麺のサバ入りスープ煮込み)の3品。

「石咾菜酸」は、キャベツの酸味が舌を刺激するあっさりした魚料理。材料の魚は鷹鵡魚(いんうーゆぃ)という。身はほろりとくずれるほどやわらかいのに、歯ごたえはしっかり残る白身魚。食べながらますます食欲をそそる、大変困った料理である。

澎湖島の潮風で一夜干ししたタコを出汁に使うスープは、まさに珍味そのもの。大きなタコがこれでもかと大量に使われ、とにかく「食べで」がある。そうか、澎湖島料理の決め手は「塩」なのだな、と実感できる味付けだ。

「米苔目」には舌触りがぷるんとした米の麺が使われる。もっちり感のある小麦麺と違い、ぷつぷつ切れる歯ごたえが独特。香港で、米を材料にした麺を好んで食べていた私にこれは特になじみの食感で、じつはすっかり気に入ってしまった。サバの濃厚な出汁も美味。鼻息も荒くなるおいしさだった。

じつは現在澎湖島には、イギリス人の財閥がアジア最大のリゾートを建設する計画があるそうだ。美しい海に囲まれたこの島は、自然&魚影が豊かな楽園。リゾートができるのは、それはそれで楽しみな気もするが、素朴な姿のままの澎湖島をぜひ一度のぞいてみたいもの。活気ある魚介市場は、島一番の魅力に違いない。舌なめずりをしながら想像する私である。

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上左から右へ順番に、石■菜酸 鷹鵡魚(いんうーゆぃ)という白身魚のアラと酢漬けキャベツの炒めもの。前高雄市長の大好物でこの店に来るといつも欠かせないメニューとか。酸味が効いて、たいへんおいしい。

塩酥蟹 菜蟹のニンニク揚げ。日本人に特に人気があると薦められたメニュー。さすがにおいしいです。このカリカリッと香ばしい食感がたまらない。ニンニクは、白いごはんにかけて全部たいらげます。絶対食べ過ぎますが、そんなことは気にしていられない。
※メニューに載っていない澎湖島料理。頼めば作ってくれます。

紅蟹米糕 蟹おこわ。とにかくこの蟹みそにかぶりついてください。

石巨干湯 タコの一夜干しのスープ タコのお出汁がよく出ています。タコが、とてもやわらかい。

烏魚子 この店のオリジナルからすみ。しつこいくらい、まったりねっとりしてます。

澎湖島料理のお店

蟹之屋(しぃんつーうー)
台湾高雄県高雄市新興区民生一路93号
電話: 07-226-6127
営業時間: 11:00〜14:00/17:30〜21:00 無休

台湾で初めて「澎湖島料理」をうたったレストラン。入口に、大きな蟹のオブジェがあるのですぐわかる(動かないけど)。蟹料理が有名で、料理に応じて5種類の蟹を使い分けて調理します。店内は意外にシックで高級な感じ。接待のテーブルをたくさん見かけました。メニューにない澎湖島ならではの家庭料理も、ぜひ。



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