| 「亜細亜くいだおれ」 August 31,1999 | |||
| 豚肉の赤身がほしいんですけど | |||
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広東語で豚肉は豬肉(じゅうよっ)、豚赤身肉を痩肉(さうよっ)という。日本では豚赤身肉といってもある程度脂肪はついているが、香港で痩肉といえば読んで字のごとし、ほとんど脂身がない。 日本人の私の感覚でいえば、たとえ脂身が苦手でも、豚赤身肉にある程度の脂身がついているのは当たり前。むしろそのほうが「おいしい」という印象があった。 ところが、香港人が痩肉といったらホントに痩肉。しかもスープに、炒めものに、さらに蒸しものにと使う豚肉は、そのほとんどが痩肉である。脂身は敬遠されてる気さえする。 もちろん例外はある。香港でも豚肉の脂身はジューシィな焼賣(しうまーい)の中身に必要なアイテムだし、東坡肉(とんぽうよっ)には脂身たっぷりのバラ肉がやっぱりおいしい。でも、香港人家庭で生活していた私にとっては、香港家庭料理を作る場合豚肉といえばどうしても痩肉なのだ。 最近では香港でもスーパーでパックものを気軽に買えるようになったが、通常痩肉は公共の市場で買う。市場の肉屋は、豚肉屋、牛肉屋、鶏肉屋(生きた鶏を絞めて売る)と、各専門で分かれる。 痩肉は塊で買うのが普通。でろんと下がってるどでかい塊からすきな場所を選び、「ここんとこ、このくらいちょうだい」と切ってもらうのだ。専門店だからこそ、すきな部位を指定して買える。料理によって使う豚肉の部位が違うので、廣東語が不自由で部位の名称を細かく知らない私にも、それは非常に便利なシステムだった。 肉を塊で買うには理由がある。スライスもミンチも、中華包丁を使って自分でやるからだ。多少は面倒だが、そのほうが味は抜群にいい。それからこれは私見だが、すでにミンチになっている肉やスライスしてある肉を「信用しない」人も多いのだ。買う方も売る方も海千山千。肉一片買うだけで、だまし、だまされる。一外国人旅行者にとっては、だからこそ勉強にもなるし、おもしろいのだけれど。 さて、日本にいても私は、香港で教わったスープをごく日常的に作る。レシピによっては、当然痩肉が必要だ。そこで、肉屋へ買いに行くのだが、これがたいへん面倒くさい。 「豚赤身肉を塊でください」というと、お肉屋さんは毎回必ず質問してくる。「何に使うの?」。隠す必要もないので、正直に答える。「スープです」。 日本の肉屋は、清潔なだけでなくたいへん親切なので「脂身があるほうがおいしいよ」と、ほぼ100%の割合でアドバイスしてくださる。 「あ、結構です。脂身のない赤身がいいんです」。 それでも親切は続く。近所の肉屋では、必ずここに肉屋の妻が登場する。妻「スープはね、脂身あるお肉で作るとおいしいのよ」(にこにこ)。「脂身入れて切りましょうか」(さらに笑顔)。 「脂身はいりません」(語尾強め)。 毎回この繰り返しなのだ。相手も親切でいってくれてるので、露骨にいやな顔もできないが、あとでこそこそ「どうやって使うのかしら」「ダイエットでしょ」と聞こえてくるのは、あまり気分がいいものではない。ただこれは、買い物をするのに無駄に喋りたくないという、私の曲がった性格も災いしてるのかもしれない。 香港では、スープを作るときは特に、豚肉だけでなく鶏肉も「脂身があまりないもののほうがいい」といわれる(だからレストランではメニューにもわざわざ素材の名を「豬肉でなく痩肉」、そして「鶏でなく老鶏」と書く)。 そんな香港家庭料理的常識をすり込まれている私が、店頭ウインドーに出てない肉を買うには、日本の肉屋のシステムは少し不便なのだ。スープ用の赤身肉だけならともかく、肉のその欲しい部分の名前をきちんと説明できないと買えないからだ。 大きな肉の塊を見ながら買える豚肉屋、東京にもあるんだろうか。 ![]() ![]() 右、明目魚痩肉湯(みんもっゆぃさうよっとーん) これは、スープの中身。こういった漢方スープは、出汁(この場合は痩肉=豚赤身肉)が決め手。これは、目にいいといわれるレシピのスープです。「コンピュータ使って仕事するから、目が疲れるでしょう」と、やさしい料理長。漢方薬てんこ盛りで、香りは相当きつい。でも、慣れるとたまらなく美味。 |
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