「亜細亜くいだおれ」 December 21,1999
引田天功なお茶、上海で発見

牛嶋さんのイラスト 牛嶋 直美
ウシジマ・ナオミ

からだの組成の87%がチューカでできているちゅーか。残りの13%はタイ、ベトナム、インド料理でできてるちゅーか。
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ご存知のとおり、中国茶にはウーロン茶以外にもいろいろな種類がある。例えば私がいちばん好むのが龍井(ろんじん)という緑茶であることは、以前もここで書かせていただいた。

その龍井の主たる産地は上海郊外の浙江省杭州で、先日の上海・杭州旅行にてその地を訪ねて感激しきり。龍井の茶葉を扁平に加工するための、中華鍋に似た釜も見学することができた。

西湖そばの茶葉博物館前では、噂で聞いた「お茶ばばあ」にも遭遇。「お茶ばばあ」は茶葉博物館周辺をテリトリーにする、いわゆる行商のおばちゃん。客が訪れるとどこからともなく現れ、龍井の缶を片手に「あんたこれ買いなさい」としつこく追いかけてくる。とにかく突然現れるのでちょっと驚くが、しつこいだけで特別害はなく、私が想像していた「上海・杭州お茶づくし」はまさにこれをもって完結と、じつは彼女たちに会えて満足しきりなのであった。

上海といえば、中国緑茶の宝庫なのだそうだ。

でも私にとっては「へんなお茶」に出会えるワンダーランド。10年前には緑茶にクコの実、棗、干しキンカン、干し龍眼、銀杏を加えた「八宝茶」らしき飲み方を体験、そして今回の上海でも、むちゃくちゃ楽しいお茶を見つけてきた。

引田天功のお茶だ。といってもご本人にはまったく関係ないが。

そのお茶はころんと丸く、名前を「仙桃献湯」という。直径2.5cmほどの球形で、なにしろ見た目がかわいい。正体は、緑茶がベースのジャスミン茶。

茶葉が「丸い」のはもちろん人為によるもの。緑茶葉の根元を糸できつく縛り、その縛った部分を芯にして、周りから包み込むようくるりと丸めてある。湯を注ぐと茶葉は勢いよくわきわきと動き出す。その姿がとにかく愛らしい。

しばらく置くと、茶葉はまん丸になる。
まりもというか、チアガールのポンポンというか、茶葉の名前から想像すると、これは花なのだろうが、とにかくまん丸になる。そして、そのなかから、なにやら茶葉とは素材感の違う異物が出現する。じつはこれがジャスミンの花。

じっくり見ていると、さらにそれはひとつでなく、次から次から現れることに気づく。白い糸につながった花々が5つも6つも出現し、そしてその小さなジャスミンもまた、満開に花開くのだった。そのさまはまるで、水中花のよう。

きれい、というよりもあまりにへんてこで楽しいので、私はこのお茶を「引田天功のお茶」と命名して友人に自慢している。入れるときは、陶器や磁気でなく、ガラスのピッチャーを使用。茶葉と花が開くのを最後まで楽しむためだ。

ちなみに、このお茶はその艶やかさを愛でるためだけにあるようだ。というのは、じつはその値段と外見から大きく期待するほど、そんなにはおいしくはないのだった。


茶葉は最初、ころんと丸まっています(左)。お湯を入れると、ジャスミンの花が……(右)。1両(50g)が65元でした。日本円で約850円。

引田天功なお茶を買ったお店

上海黄山茶叶有限公司
上海淮海中路853号
電話:6437-7627 

英語の上手な店員がいましたが、いつもいるかどうかは不明。さんざん茶葉を買った後で、「これも買いなさい」と店員が最後に薦めたのが「仙桃献湯」でした。歴史ある老舗ですが、昔(私が行ったのは10年前ですが)からは信じられないくらい、すっかり現代的なお店になってしまいました。



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