「亜細亜くいだおれ」 February 29,2000
台湾のいびつな魚せんべい

牛嶋さんのイラスト 牛嶋 直美
ウシジマ・ナオミ

からだの組成の87%がチューカでできているちゅーか。残りの13%はタイ、ベトナム、インド料理でできてるちゅーか。
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淡水(たんすい)は台北の郊外にある港町。

もとは貿易港として栄えたそうだ。スペイン、オランダ、イギリスなどに占領された歴史をもち、現在も残る美しいレンガ造りの学校や紅毛城はその名残。海に沈む夕日がはとてもきれいで、その時間帯になるとどこからともなくカップルが現れ、突然ロマンチックな世界になる。

街は、淡水河北側の河口から海に抜けるあたりの丘陵に広がる。河口から海。つまりは淡水(塩気のない水のほう)と海水とが交わる場所なわけで、よーするにここもまた、おいしい魚で有名なわけだ(そればっかり)。

一見のんびり素朴に見えるこの街も、B級グルメ的視野で厳しく観察するとじつに奥が深く、まったく油断がならない。なにしろ名物の名前を書いた看板が、街中にあふれているのだ。「魚丸(ユィユェン)」はともかく、「阿給(あげい)」だの「鐡蛋(てぃえたん)」だの「魚酥(ゆぃすー)」だの、台湾でもまずここでしか見られないんじゃないだろーか。なにしろその数ってばおどろく程で…。とにかくへんな街。(※「すき」ということです)。

「魚丸」は魚のすり身団子。ただし淡水のはちょっと特別で、真ん中に豚ひき肉団子がちょこっと入っている。ひと粒で2度おいしく得した気分になるので、機会があったらぜひ一度かじって中をのぞいてみてください。

「阿給」は揚げ豆腐に煮込んだ春雨を詰めたもので、ピリ辛ソースをちょっとのせて食べる。日本語の「油揚げ」からついた名前だそうだ。平均的日本人の目には、少し「ふしぎなたべもの」だけど、こないだ見かけた台湾人サラリーマンによると、「これが食べたくて来るんだよお。週に2度は絶対」。どうも習慣性があるらしい。

「鐡蛋」は、文字通り鉄のように固い卵。醤油ベースの調味料で鶏卵を煮て冷まし、その作業を1週間繰り返して作る。卵はきゅっと小さくしぼみ、やがて白身は真っ黒になり、その食感は一度ではかみきれないほどに固い。でもこれがまたたいへんクセになる代物で、私など油断してるとビール片手についひと袋(ひと袋というのは20個ほど。すごいです。なにしろ鶏卵!)。

「鐡蛋」にはうずらの卵バージョンもあり、こちらは白身がさらに固くなる。歯が弱い人には無理かも。しかしコレの根強いファンである友人は「あの固さがたまらない」と、最近ではうずらをリクエストしてくるようになってしまいました。

いちばん地味で、でも私がいちばんすきなのが「魚酥」。魚のすり身を小麦粉と混ぜ、細く搾り出して揚げた、いわゆる魚せんべい。こないだ2年ぶりに淡水へ行ったら、この「魚酥」の看板が急激に増え、あちこちの店で袋がてんこ盛りになっていた。好きなのはどうも私だけじゃないようす。

淡水は港町で魚が名物。そんな錯覚があった。いや、錯覚ではないかも。台北の友人は「海鮮といえば淡水」と、やっぱりいう。

もちろん海鮮料理屋は淡水にとても多い。事実。でもじつは、実際に人気があるのは現地で獲れる小魚類よりも、カナダやオーストラリアから輸入されるおいしいカニやロブスター。それに比べて「魚酥」や「魚丸」の材料となるサメやイシモチなどの立場的に外道な魚たちは、すべて地元で水揚げされるものなのだ。

つまりホントの淡水名物は、立派な海鮮料理より、じつはこっちの屋台小吃(いわゆるB級グルメ)なのかもと、今回実感した次第。そのほうがずっと楽しいもんね。


おいしい「魚酥」のお店

合益號
台北縣淡水鎮中正路186號
電話:2621-1410

じつは淡水中にある商店の店先で「魚酥」は山盛り。というくらいどこでも買えるんですが、私のお気に入り&イチオシの店。裏ですり身を混ぜていて、出来あがった状態のイビツ加減がぐー。他の店のは、袋はお洒落でも、搾り出した後が信じられないくらいきれいなチューブ状で。それが逆に気に食わない。いびつ好き。女の子(すいません)って、むずかしいの。ひと袋NT$40(約150円)。

左手にビール、右手に「魚酥」が正しい食べ方。



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