| 「亜細亜くいだおれ」 March 28,2000 | |||
| アカジン、食べました沖縄 | |||
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クルマを飛ばして随分急いだけれど、今帰仁城跡(なきじんじょうせき)へ着いたときは、すでに夕暮れが迫っていた。清明節直前(旧暦2月)の沖縄はうりずん(季節の変わり目)で、毎日の天気が不安定。その日も朝からひどい天気だった。 夕方の今帰仁は雨に煙り、風が吹きつけ、城跡の周囲に人気は皆無。言い訳すれば、そんな状況を好んで訪れたわけではなく、出張日程の都合から、どうしてもその日その時間にしか行けなかったのだ。 駐車場へクルマを停める。雨はますます強くなっている。傘をもたずに来たわたしは、仕方なく売店へ傘を借りに行く。「なんでこんな雨ん中やってきただ。自然をなめとんのかぁっっ」。おじいが烈火のごとく怒っている。うえ。どうしよう。怖い。でも、どうにかこうにか傘を貸してくださることに。 暗くならないうちにと、わたしたちはすぐ鳥居をくぐった。 「なぁきーじぃんー? なんにもないだろぉ。あすこはぁ」そういったウチナーンチュ(沖縄人)もいたけど、来てスグわかった。ここには、なんかある。ちょっと意味がチガウけど。雨に濡れた石畳を一歩一歩進むにつれ、えもいわれぬ雰囲気に圧倒される。なんだろう、これ。それは霊感ゼロのわたしにも感じるほど。念? なんて表現すればいいのか。不思議な感情が胸いっぱいにあふれてきた。 「とりあえず、ざっと見て帰るだけ」のつもりだった。が、案内人の山下さんから火の神様の存在を聞き、「ご挨拶しなければ」と直感。火の神様といえば、台所を司る神。うわわわ。そりゃあ、わたしの神様でもあるですよ。 両手を合わせた後、そっと小さな社のドアを開く。ご本尊を予想していた。ところが、社のなかには何もない。れれ。どこに神様がいるんだろう。薄暗い社のなかには、質素な四角い瓶が三つ。どの瓶にも灰がいっぱい入っている。聞くと、その灰に神様が宿っているという。山下さんは神様へご挨拶し、静かにドアを閉じる。そして歩きながらいった。「もし写真を撮るなら、ドアは開けないように。念がとても強いですから」。 ウチナー(沖縄)では、どの家にも火の神が奉られているそうだ。それはやはり灰が詰まった小さな瓶で、独特のお線香をたて、毎日欠かさずに祈りを捧げる。今帰仁の火の神様はそのモトとなる社なのだ。眺めのいい高台に立ち、その後山下さんから今帰仁にまつわる物語を聞く。歴史ギライのわたしも、さすがに胸がいっぱいになった。そして、雨の城跡を後にする。 さて、感動はまだ覚めぬままだが、今晩のごはんは魚料理。なきじんの後はアカジンだ。 取材時に本部港の魚問屋で遭遇し、どうしても食べたい魚があった。それがアカジン。香港でいう星斑(しんぱん)、和名はスジアラ。ハタの一種。香港でも、福臨門で食べると大した値段だった。白身魚で、身はあくまでやわらかく、それはそれは上品な味の蒸し魚である。確か台湾の市場でも見たことがある。そしてコレは沖縄随一の高級魚でもあるそうだ。なんだか「沖縄ってアジア」を実感する。だけどその日に見たアカジンは、お得意さまの予約モノで買うことができず、心残りのうしろ髪。 そこで親切なウチナー(沖縄の地元の人)に頼みこみ、鮮魚専門店へ予約を入れてもらったのだった。その宴会が今晩。もし名護市場に魚が入っていれば、食べさせてもらう手はずなのだ。アカジンへの期待が膨らむわたし。 果たして、アカジンは入荷した。これも今帰仁の火の神様のご利益か。ありがたいようん。 鮮やかな赤い魚の身は、つややかな桜色をしていた。肉厚で、歯ごたえはしっかりあるがやわらかい。まずはそのまま食べて身そのものの甘さと舌触りを楽しみ、ワサビ醤油であっさりいただき、最後は地元風に酢味噌をたっぷり和えてみた。本部産の泡盛を、アセロラシロップとミネラルウォーターで割ったアセロラパンチを飲みながら、桜色の刺身に舌つづみ。すると厨房の大将が、アカジンのアラで出汁をとった魚汁を持ってやってきた。怖いほどしやわせな今日のわたし。 ところで。店内に貼られたポスターには、沖縄で獲れる魚が図鑑のように並んでいた。ポスターには、魚の名が、ウチナー口(うちなーぐち=沖縄方言)とヤマト口(やまとぐち=標準語)で記され、さらには代表的な食べ方まで書かれている。すごい宝物だ。ほ、欲しい。「どうしたらこれが手に入るか」。さんざん聞いたが、「漁協かな」「役所かな」と、へんなものを欲しがるわたしの対応に戸惑う人々。 名護市役所の農林水産科を訪ね、ダメモトで聞いてみた。「沖縄の魚の資料はありますか」。水産科の若い男性と上司とおぼしき男性が、2冊の書籍を見せてくださる。でも、わたしが欲しいのはコレじゃない。昨晩、沖縄の魚を食べた店で貼ってあったポスターの話をすると、上司の方が「一枚しかもうないけど、持っていきなさい」と、ポスターを縮小させたような下敷きをくださった。八重山のさかなの下敷き。そこにはアカジンもしっかり載っている。 何度もお礼をいい、胸に抱き、持って帰る。この場を借り、もいちどお礼を。ありがとうございました。おさかな下敷き、大切にいたします。
![]() ![]() 真っ赤な皮に青っぽいポツポツが鮮やかなアカジン(下左) 島どうふと一緒に炊いたアカジンのアラの魚汁(下右)
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