| 「亜細亜くいだおれ」 June 20,2000 | |||
| メコンのでかエビ | |||
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「海のエビは大きく、川のエビは小さい」となんとなく思いこんできたわたしに、ベトナムの淡水エビはあまりに驚異的なでかさだった。 もちろん、そんなことは百も承知のはず。ベトナム料理店へ行くたびシェフやら店主から「これは川エビ、これは川カニ」と、うるさいほど説明されているからだ。つまりメコン川はそれほど広く大きい豊かな川というわけで、理屈では十分わかっている。だけど、なんだかどーしても腑に落ちないのだ。 しかも、大きいのにやたらうまい。そんな言い方も語弊があるけど、蒸したり焼いたり茹でたりと、旨みをそのまま生かした調理法で食べる新鮮なベトナムの川の幸は、その味を思い出すだけで耳下腺のあたりがじゅわっと刺激される。それほど、本当にうまかった。特にエビ。ベトナムって、なんて罪な国なのだ。 今回特に印象に残った料理は、2品ある。 ひとつは「Tom the hap bia」(とむちぇーはぷびあ)。「川エビのビール蒸し」だ。 その名の通り、エビをビールで蒸しただけの単純な料理だ。素材は、大正エビ程度の殻つき川エビ。フォーク&ナイフもあるにはあるが、わたしは熱々のエビをおしぼりでしっかり抑え、指で殻を剥いて食べた。いや、手で食べるとさらにうまいのだ。 新鮮なエビの歯応えはあくまでプリッと固め。ビール蒸しといってもビールの風味はなぜかほとんどなく、中国料理でいう「上湯蒸し」に近い繊細な味わいである。 もうひとつの料理、「Tom cang nuong(とむかんぬぉん)」は伊勢エビほどもある川エビの炭火焼き。見た目は相当に野蛮でワイルドだが、味わいはなぜか上記のエビと同様驚くほど繊細である。強い弾力のある噛み応えと、舌に残るほんのりした甘みがたまらなくうまい。頭をつぶし、ミソまでぺろりと舐める。 ベトナムを訪ねてこのエビに遭遇したときは、トゲトゲのある両ハサミ部分も忘れずに食べること。その固い殻を剥くと、中の身には鮮やかな朱色の薄皮がついていて、この部分の食感がこれまた珍味なのだ。薄皮を噛むと、なんというか梨やレンブのようにシャリッとした不思議な食感がある。 ひとつ気をつけなければいけないのは、殻の固いトゲトゲ。これが、指の腹に突き刺さるので非常に危険なのだ。わたしは殻と格闘した際、鋭いトゲが指先の皮を「ぷち」と突き破り、あまりの痛さに途中リタイヤ。店内で「ささったー」「いたいー」「とれないー」「ぎゃー」「血が出るー」と騒いでいたら、見かねたウエイターがやってきて、バリバリと器用に剥いてくれた。 ところで、ベトナム料理にはつけだれが必須である。料理一品につき1〜2個ずつのたれがつく。それはヌクマム(魚醤)だったり、ヌクトゥオン(ベトナム醤油)だったり、マムトム(小エビの塩辛。香港の蝦醤、タイのカピと同じ)だったり、料理の素材や味付けによって香りも風味もまるで異なる。 ボイル・スチーム・グリルなど、身のうまさで食べるエビカニ専用のつけだれは、「Muoi tieu(むぉいてぃえう)」。 塩と胡椒にベトナムライムを絞って箸でぐるぐる混ぜ、エビやカニの身をつけて食べる。しごく単純なものだが、このたれをつけるとエビカニがさらにあっさりすっきり食べられ、なんだかいつまででも食べ続けられそうなおいしさなのだった。ベトナムのエビもえらいが、たれはもっとえらいと実感。 ![]() Tom the hap bia(トムチェーハプビア): エビさんがひたひたに浸かっている、皿のスープ状のものがビール。スプーンですくって味見したが、ビールの風味はあまり残っていない。 Tom cang nuong(トムカンヌォン): エビは嫌いじゃないが、それほどすきな食材でもない。殻剥くの面倒だし。今回はウエイターが丁寧に解体してくださったので、折角だからと食べてみたらこれが意外にムチャうま。両ハサミ内のシャリ感は、機会があればぜひ体験してくださいまし。 Muoi tieu(ムォイティエウ): なにしろ今回クセになったのが、このつけだれ。天然塩やベトナムライムもうまいが、コショウの味がまったく違う。風味豊かで辛味はマイルド。もし日本でこれを真似するなら、酸味の鋭いレモンよりもライムやスダチ、カボスがオススメ。塩はもちろん天然塩で。
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