| 「亜細亜くいだおれ」 July 4,2000 | |||
| ホーチミンの紙ごはん | |||
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「ゴイクォン」(生春巻き)は、ホーチミンで食べる美味しい日常食のひとつ。 エビ、豚肉、ビーフン、野菜を、極薄のライスペーパーで包み、ちょっと甘めの味噌だれやピーナツだれで食べる。しいていえば、たったそれだけのとても単純な料理だが、わたしにとっては思い出すだけで「んふふ」と頬がゆるむ、なんとゆーかたいへんに奥深い料理なのである。 ホーチミンのレストランで食べる「ゴイクォン」は、ほぼ「巻きたて」で出てくる。特にわたしの目にとても新鮮だったのは、具を巻くとき、乾燥したライスペーパーをやわやわには戻しておらず、いつも少し固めのまま出てきたこと。それらはいつも「ほぼ乾いた状態」だった。 ジツは「ライスペーパーの戻し方」というのは、料理好き友人間でも議論を闘わせる大問題で、先日わたしも参加したアジアごはんのレシピ本「ぐるっとアジアごはん天国」(青春出版社 ※下記に詳細を書かせていただきました)でも、ベトナム料理担当のHさんがたいへん苦戦してらした。 「これ」という戻し方が、なかなかないのであります。失敗するほとんどの場合が「水の浸けすぎでへにょへにょになってしまう」こと。皮が固いままだと「なんとなくナマ」感がいなめないのもその原因のひとつ。もちろん戻したところで結局はナマなのだが、「やわらかくなった=食べられる」という勘違いがどうも感覚的にぬぐえず、結局それがまたも失敗の原因という堂堂巡りを繰り返しているのだった。 わたし自身も随分とテストした。そのまま食べてみたり、葉っぱで包んでしっとり感を出したり、霧吹きで戻したり、ボウルに張った水にくぐらせたり、自宅でいろいろ実験を繰り返した。ボウルの水にくぐらせるのがカンタンだが、うっかりくぐらせすぎるとしなしなになるので、オススメはやっぱり霧吹き。結局はコレがいちばん失敗が少ない。 ホーチミンのレストランでは、ライスペーパーをバナナの葉などに包んでおき、その水分で微妙な「しっとり感」を出しているのだが、出てくる「ゴイクォン」の皮はすべて、わたしの目には間違いなく「乾いたまま」具を包んでいるように見えた。 わたしは、慣れてしまうとこの「乾燥ライスペーパーに限りなく近い、やや固めの中途半端な食感」が、すっかりクセになってしまった。それどころか現在わたしは、最初からしっとりしてる「ゴイクォン」など、逆に「新鮮じゃない」と感じている。慣れとは恐ろしいものだ。 なにしろ、ホーチミンで体験した生春巻きのライスペーパーは、9割以上が(わたしの感覚では)乾いていた。乾いたライスペーパー。その最初の食感は、わるくいえば厚めのオブラート、さらにわるくいえば障子紙である。 だけど、そのパリッと乾燥したライスペーパーが、時間がたつうち具の水分で生乾きのような状態になり、さらにひたひたにつける味噌だれでしっとり感を増す。その、変化する感じがたまらないのだ。たいへん微妙で繊細な変化である。「こ、これでいいのかなあ。ドキドキ。だいじょぶかなあ」という不安感が、より禁断の食感を作り出すのだと思う。 ところで。これは、ベトナム人のフンさんから聞いた話。 ライスペーパーというのは、そもそもベトナム戦争中に兵士の携帯食として発展したものという。過酷な戦火のモト、この主食はそのまま何日持ち運んでも、水にさらされない限りパリパリのまま保つことができた。しかも、食べるときにはほんのり湿らせるだけで、やわらかく戻すことが可能なのだ。ライスペーパーは、たいへん便利な携帯食として人気が出た。 ベトナム語では、バインチャン。バインは「餅」、チャンは「塗る」。溶いた米粉を綿布に薄く塗りつけて蒸し、竹網の上で乾かすというその作り方からついた名前である。特徴的な表面の網目模様は、このときにできるものだ。 見た目はまったく違うけど、これ、ジツは香港のぷるぷる(腸粉=ちょんふぁん)の作り方とそっくり。腸粉は乾燥させないからぷるぷるのままだが、それはそれでベトナムでいう、バインウットムチャイなどのフエ料理のスナックにとても似ているのだ。モトを正せば原料は同じなんだけど。わたしがベトナムで感じる「中国華南」「香港」「タイ」らしさは、なんだかそのお米の使い方にもある気がした。 さて。 ベトナムへ行かれる際は、ぜひライスペーパーをお土産に。選ぶときは、弾力のある白っぽいものを探すことをオススメします。薄くても破れにくいものがぐーです。一見するとまるで紙のようだけど、よいものはお米の風味がそのまま色濃く残っていて美味。タロイモ入りの黒いライスペーパーもあるけど、基本的には白が中心です。にごった色のものは、材料のお米が悪いものが多いので、どぞ気をつけてくださいまし。 ※またも宣伝です。すすすみません。11人のアジア料理大好きライターが集まって、「ぐるっとアジアごはん天国」(青春出版社 7月17日発売予定)という本を作りました。 これはベトナム・タイ・中国・韓国・インド・ネパール・カンボジア・ラオス・沖縄など14ヶ国の料理のレシピと、その料理にまつわるエッセイをまとめたものです。 わたしはこの本で「中国・韓国料理」レシピを担当。香港人の友人から「そんなもん、自分じゃあ作れないよ」と笑われながらも、「トンパラッ」「火鍋」「龍井蝦仁」「砂鍋雲呑鶏」「ミヨックッ」「土鍋ビビンパプ」などのオリジナルレシピを作りました。日本の材料でできるよう、すこし工夫してます。どぞ、見てくださいまし。よろしくお願いいたします。
![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ベトナム版ぷるぷる:レックスホテルの朝食ブッフェに出てきた、エビと豚肉入りのぷるぷる。何度も聞いたけど、残念ながら名前は聞き取れませんでした。 バインイット(お団子):これもレックスホテルの朝ごはんブッフェメニュー。お米の粉でできたもっちり団子に、皮むき緑豆を煮込んだあん入り。あんといっても塩味で、ラッキョ入りヌクマムをかけて食べる。 フエ料理のスナック盛り合わせ:これまた、すべてぷるぷる。基本的に、中心となる材料はお米の粉とエビ。どれも味は似てるのに、食感は全部微妙に違うのが不思議でした。 お米売り場:ベンタイン市場の中のお米売り場。種類も金額もさまざま。「いちばんいいうるち米はどれ?」と聞いたら、写真の山を指差される。そこで、1キロ購入。1万ドン(約76円)でした。
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