「亜細亜くいだおれ」 October 3,2000
香港の空港で飲茶

牛嶋さんのイラスト 牛嶋 直美
ウシジマ・ナオミ

からだの組成の87%がチューカでできているちゅーか。残りの13%はタイ、ベトナム、インド料理でできてるちゅーか。
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自分で書いた原稿を読んで蓮蓉月餅(りんよんゆっぺん=くどい蓮あんの月餅)がどうしても食べたくなってしまい、香港へ。

目的の月餅はもちろん、友人の香港人家族と一緒に「もういっぱいです入りません許してください」というまで、滞在中毎日しやわせな飲茶&廣東料理三昧。けど、それだけ楽しんだところで、いざ帰るとなるとどうしても「あともう一食」はやっぱり諦めきれない。

帰国日。早朝の空港で無事に荷物のチェックインを済ませ「今日は時間もないことだし、おとなしく本屋にでも入ろう」と思っていたら、上方からカチャカチャという食器の触れ合う心地よい響き。ぴく。さらに追い討ちをかけるかのような、出来たて点心の匂い。ぴくぴくぴく。

魔性の誘惑に釣られてついフラフラと店へ入ってしまった。フライトまであと1時間。以前のこぢんまりした啓徳空港ならいざ知らず、チェラップコッ新空港は成田より広い。はっきしいって、相当に危険な行為でありました。

さっそく普洱(ぽーれい=プーアール茶)を頼み、ワゴンのメニューに目を通す。時間がないので、あっさり系野菜だけのぷるぷる(腸粉=ちょんふぁん、お米の粉を蒸したぷるぷるした食感のクレープ)と初めて見るメニューを1品、即効で注文。

やってきた点心は、想像を遥かに超えるものだった。

名前からしてすごい。なにしろ「麻婆豆腐餃(まーぼーたうふーがう)」。ぼんやりと麻婆豆腐入り餃子を思い描いたが、その物体は四川風の麻婆豆腐からはずっと遠い珍品だった。

一見、潮州料理の点心にある「潮州蒸粉果(ちうちゃうちぇんふぁんぐぉ=葛風の透明な粘りのある皮で作った餃子)」に似た外観。箸で解体し、独自調査したところによるとその中身は、シイタケ・玉子豆腐・辛子明太子・豚肉。しかもすべてが超細かいみじん切り状態で、固形物の気配はほとんどなく、箸で持つのにコツがいるほど全体がうにゅうにゅと粘る。

味はまた違う意味でとても辛く……。さらに、今考えても中国料理なのかどうかはまったく不明。なにしろ「麻婆豆腐」の解釈が「辛子明太子+玉子豆腐」。恐るべし香港であります。けど、いろんな文化が自由自在に入り混じり、返還後はさらにボーダーレスに国際化してる現在の香港料理(廣東料理ではなく)を象徴してるような気も。

しかし、食べたことのないものに触発されて思わず長居し、飛行機に乗り遅れそうになったわたし。空港で搭乗前に飲茶するなら、ぜひとも2時間前には空港へ。

※ところで。どこへいっても現地人に間違われる人は、ここでも廣東語で話しかけられるので…。というか朝イチ、しかもフライト直前まで飲茶したいなんて食いしん坊は、香港人に間違えられても仕方ないのであります。案内係はもちろん、ワゴン姉さんも英語は解するけれども、せっかくの機会ですので、ぜひ簡単な会話を廣東語でお楽しみくださいまし。

1 早晨(ぞうさん=おはようございます)

入口で最初に声をかけられる言葉。ここでは、間髪入れずにニッコリ。あるいは「ぞうさん」と同じ発音で繰り返してみる。

2 幾多位?(げいどううぇい=何名様ですか)

店に入って最初に会う案内係から聞かれる。これには、「一位(やっうぇい=ひとり)」「両位(りょんうぇい=ふたり)」「三位(さーむうぇい=3人)」「四位(せいうぇい=4人)」「五位(んーうぇい=5人)」など人数を。指で人数を示せば完璧。ただし「六位(ろっうぇい=6人)」の場合は、ハワイでいうハングルーズ(シャカ)の指サイン(親指と小指を立てる)で。

3 乜野茶呀?(まっいえちゃーあ=お茶の種類は何にしますか ※野は、口へんがつく)

テーブルまで案内した係が、客がイスに座る直前に言う。人によっては『めぇちゃー』と短縮して発音する場合も。答えるときは「普洱(ぽうれい=プーアール茶)、香片(ひょんぴん=ジャスミン茶)、鐡観音(てぃっぐんやむ=鉄観音茶)、水仙(そいしん=ウーロン茶の一種)、壽眉(さうめい=白茶の一種で癖の少ない無発酵の中国茶)」など、好きなお茶の名前を。

挨拶はここまで。あとは、ワゴン姉さんたちが運んでくるセイロを見てオーダーするのみ。ワゴンにはたいてい、正面部分に点心の名前が書かれているが、これは全部謎の漢字の羅列(廣東語)。例え読めても中身はよくわからないので、ここはひとつ無理せず指差し注文をどうぞ。

4 埋単(まいたん=お勘定をお願いします)

最初に「唔該」(んーこい=すみません)をつけるともっと現地っぽいす。






上左と右:驚きメニュー「麻婆豆腐餃(まーぼーたうふーがう)」の、外観と中身。物好きさんにオススメ。

中:「羅漢斎腸粉(ろうはんちゃーいちょんふぁん)」の具は、野菜のみ。ちなみに、シイタケ・きくらげ・人参・タケノコ入りでした。

下左:店内は相当に広く、天井も高く、最後の晩餐に最適シチュエーション。まじ楽しいです。けど、会計にわりと時間がかかるので、飛行機に乗り遅れないよう気をつけてくださいまし。

下右:空港マキシムならではの、最大の特徴がコレ。飛行機柄のワゴン。啓徳空港時代の名残。これを見るたび「ああまた来るべ」という気持ちになる、まるで子供のわたしであります。



港で最後の一食が味わえるお店

美心閣(めいさむこっ・Maxim's Chinese Restaurant)
住所:香港國際空港内
電話番号:2186-6068
営業時間:6:30〜23:30(未確認だが飲茶はたぶん15時くらいまで)

イミグレに入る直前、小さなエスカレーターを上ったすぐ右側にあるオープンエアの(というより吹き抜けというのかもしれない)廣東料理店。朝イチから味わえる飲茶は「あと一食」のいじきたない食欲を十分満足させてくれる。というか、匂いに釣られてついフラフラと入ってしまう魔性のレストラン。「そんな時間はない」というときは、美心閣のさらに奥にある「快餐(ふぁいちゃん=ファストフード)」へ。


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