| 「亜細亜くいだおれ」 October 31,2000 | |||
| メニュー読書の秋 | |||
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秋といえば読書。 といっても、最近気に入って読んでいるのは本ではなくメニュー。これまで旅行してきた国で、一冊ずつ、何年もかかってて集めてきたものだ。特に好きなのは料理名が中国語で書かれているもの。なかでも香港のものにはダントツ食欲をそそられる。 ひとくちに「香港のメニュー」といっても、種類はさまざま。写真入り、オールカラー、1色刷り、フサ付き、大きく立派なもの、小ぶりのブック型、何十ページもある大作、廣東語だけ、英語入り、日本語訳がついたもの、日替わりの手書きメニューなどなどなど。だけどもそんな中、わたしが好きなメニューの条件はしごく単純である。とにかく、おいしそうな香港家庭料理の名前が廣東語で並んでいること。 わたしにとって食欲をそそるメニューは、あまり華美でなく廣東語だけを綴った質素なもの。料理名のラインナップも重要である。翅(ちー=フカヒレ)だの燕窩(いんうぉー=燕の巣)だの鮑(ぱお=アワビ)だのは、食べる分にはすきだが、料理名はやたら大袈裟なことが多く、読むにはやや興ざめ。読んでそそるメニューといったら、やっぱり家郷菜(がーひょんちょい=家庭料理)が一番。 現在すきな読書用メニューは4つ。鵞鳥料理で有名な中環(ちゅんわん=セントラル)の繼L酒家(よんげいちゃうがー)と、銅鑼灣(とんろうわん=コーズウェイベイ)の英記海鮮火鍋酒家(いんげいほいしんふぉうぉちゃうがー)の小ぶりな方。3つめは料理の英語名も併記した立派系で、銅鑼灣の上海緑楊邨酒家(しょんほいろっよんちゅんちゃうがー)のメニュー。以上は料理の写真がなく、文字のみのごくシンプルなもの。唯一写真入りで気に入ってるのは、下記に紹介した東海海鮮酒家(とんほいほいしんちゃうがー)のメニューである。 中国語の料理名は、食材、調味料、調理法から成る。つまりそれを「読む」ことで料理がリアルに目に浮かび、想像力がかきたてられるのだ。 例えば、竹笙蝦丸湯(ちょっさむはーゆんとん)は、竹笙(キヌガサダケ)と蝦丸(蝦すり身団子)の湯(スープ)。椒塩脆鮮魷(ちういむちょいしんやう)なら、鮮魷を椒(ちう=チリ)と塩(いむ)で味付けした揚げ物。脆は「カリカリッ」「パリパリッ」など、歯応えがよいことを表す形容詞。この字がつく場合、たいていそのメニューは揚げ物であることが多い。 これを英語に訳すと、単なる素材の羅列になる。また日本語にすると一言では表現しきれず、どうにもわかりにくくなってしまうのだ。訳した結果、中国語料理名ならではの韻や装飾語が、すっかり消えてしまうのも興ざめ。 さて。こうしてメニューについて考えたり書いたりするだけで、わたしのお腹はぐうと鳴る。そしていつも決まって「早くまた香港へ行こう」と決意を新たにするのだ。自室のカウチに寝そべり、おいしい中国茶を飲みながら廣東語メニューに没頭してにまにま。こうして書くと何やら危ないが、わたしにとってそれは何にも替えがたい極上&至福のひととき。しやわせな秋の夜長なり。ぐう。 ※(そんな人はいないと思いますが)思わず香港の店のメニューが欲しくなってしまった方へ。わたしが集めてきたメニューは、雑誌などの仕事で取材したとき「資料に」とお願いして、広報の担当者からいただいたものがほとんど。また、店によっては自分で買ったりしたものです。客として店へ行って、突然お願いしても断られる場合があると思います。その辺はどうぞご了承くださいまし。 ![]() ![]() 上左:秋の愛読書。特にお気に入りは、左側の「英記海鮮火鍋酒家」のもの。昔ながらの表記があって個性的。たいへん勉強になります。 上右:東海海鮮酒家の、とにかく見やすいカラー料理写真入りメニュー。他にも文字だけのものなど、メニューはいろいろあります。 下左:東海海鮮酒家の料理で「鮑角扣鵞掌」。角切り鮑と鵞鳥の水かきの醤油煮込み。鵞鳥の水かきは、あまり見慣れぬ食材ですが、たいへんおいしゅうございます。 下右:椒塩九肚魚。九肚魚という海魚の空揚げ。チリと塩で味付けしてあります。口に入れると、ホロホロとくずれるほどやわらか。やはり東海海鮮酒家の料理。
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