| 「亜細亜くいだおれ」 November 14,2000 | |||
| 東京の上海蟹 | |||
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例の季節。なので、会ってきました。上海蟹。といっても今年は上海でも香港でもなく、東京。そして、それでも十分しやわせ。 中国語では大閘蟹(だーじゃーしぇー ※廣東語読みは、だいちゃっはい)。この名の由来は、わたしが知る限り2つある。ひとつは香港の友人から聞いた話で、「閘」の字が罠を表し、草で罠を仕掛けて捕ることにより命名されたというもの。そしてもうひとつが、東京の中國飯店総支配人から伺った説だ。 「閘」は水門を表すという。 中国各地方の河川に住む淡水蟹がその原種で、各地元では湖蟹(中:ふーしぇー、廣:うーはい)や河蟹(中:ふーしぇー、廣:ほーはい)の名で大雑把に呼ばれる。これは四万十川など、日本の河川でも生息するモクズガニと同じ種類。この蟹の最大の特徴は遡行する習性なのだが、「大閘蟹」は同じ淡水蟹が水門によってせき止められた湖で、遡行できなくなった珍種だけを指すという。 光生館の現代中国語辞典でも、小学館の日中辞典でも、「閘」は水門を表す。現在、厳密には上海郊外にある洋澄湖など5つの湖で取れる淡水蟹だけを「大閘蟹」の名で呼ぶことから、後説の方が説得力はある。 けど、香港の大閘蟹は「中国のいろんな地域から入荷する」と聞いたことがあって、それも言下には否定したくない。そのルーツを解明する旅を想像するとこれまた楽しそうだが、今の時点では灰色のままだ。なんか話が中途半端に終わって申し訳ないが、「それはそれでいいじゃん」というのが正直なところ。 総支配人の話には続きがあった。 日本での通り名である「上海蟹」は、中國飯店の先代による命名だという。いや、正確にいうと「先代と一緒にシゴトしていた仲間内でそう呼ぶようになった」そうだ。 中國飯店が上海蟹の輸入を始めたのは、日中平和友好条約以前の1970年。国交がないもんだから、当時その淡水蟹は、中国から香港を経由して日本へやってきた。店では当初その蟹を、ごく当たり前に「香港蟹」と呼んだという。 日本と中国との国交が成立した後、しばらくして蟹は上海から直接空輸されるようになる。箱に書かれた「香港蟹」の文字が、業務上「上海蟹」と書かれるようになったのは、自然な成り行きだった。そしてそんな仲間内での呼称は、いつの間にかメニューにも使われる一般名称になる。 「上海蟹」の名は基本的に日本でしか通じず、現地では「上海蟹を中国語では大閘蟹といってね」と、事情通が薀蓄を傾ける第一声として使われるくらい。実際の産地が上海ではなく上海郊外ということもあり、結構揶揄されるコトが多い。けどこれ、「商品名」として考えるとなかなか大したモンだとわたしは思うのだ。 さて、上海蟹は今がまさに旬。毎年10月末になると、蟹の産地辺りをものすごい突風が襲うのが恒例で、その「突風が吹いた直後の蟹」こそが一年でいちばんうまいという。 「理由はわかりませんけど」。と、総支配人は話を結んだ。 聞きながら、「うう、それ事実かも」と、ぼんやり実感していたのは、一年前の宴席を思い出したから。ひょんなことから上海に飛び、穴吹仙人編集長たちと「王寶和」(わんばおほー)で上海蟹に舌つづみを打ったのは、そう、確か11月の始めだった。あの上海蟹の中身は、今思い出しても本当にすごかった。とにかくぎっしり、白いのとか黄色いのとかがぱんぱんに詰まっていた。特にオスの体に詰まっていた、あの「白いねっとり」の量。半端じゃなかったもんね。 大好きってわけじゃないのに、年に一度はやっぱ恋しい。マイブームは、「卵(メス)」より「ねっとり(オス)」。いつまでもずるずる続く関係というか、どうにもきっぱりとは別れられない魅力的な相手なのだ。ああ、やっぱ今年もせめてもう一度、会いに行くべか。上海蟹。 ![]() ![]() ![]() 上左:中國飯店の活け上海蟹の山。全部食べたわけではありません。 上右:今年2匹目の上海蟹。やはりオスでした。これも中國飯店。食べるときは、全部ほぐしてくれます。足もむいてくれます。 中左:新世界菜館の上海蟹。はかまが尖ってるのでオスです。 中右:新世界菜館では、こうしてバラバラに解体されて出てきます。 下:昨年食べた、上海「王寶和」の上海蟹。これはオスの中身で、白い「ねっとり」がこんなにぎっしり!
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