| 「亜細亜くいだおれ」 February 20,2001 | |||
| 駄菓子てぃんてぃんとーん | |||
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香港の長沙灣(ちょんさーわん)という下町で、懐かしい駄菓子を見つけた。 「てぃんてぃんとーん」というちょっとかわいい名前のそのお菓子は、漢字で書くと叮叮糖である。位置としては、日本のソースせんべい的なジャンク駄菓子。昔の香港では、街角のあちこちに突然出没する小販(しうふぁん)という移動屋台で、白髭のじいちゃんがよく量り売りをしていた。 わたしは日本生まれ日本育ちの生粋日本人なのだから、こんなお菓子が幼少時の記憶において懐かしいはずはない。が、ここ十数年も同世代の香港人と一緒にアジアで買い食いしてばかりいたせいか、どうもヘンなすりこみ記憶が身についてしまっている。その期間の香港の変貌ぶりがあまり大きいというのも、そのインチキ記憶の理由のひとつかもしれない。 見た目は、ごくごくちっちゃなカルメ焼きである。大雑把にいえば、同じように砂糖を熱して空気を含ませたお菓子。だけど食感はもっと固く、カテゴリとしてはアメに近い。だけど、食べるときはがりがりと全部かじってしまうのだから、やっぱりアメよりカルメ焼きなのかなとも思う。そして、だからこそ懐かしいのだろうか。うーん、やっぱり謎だ。 「てぃんてぃんとーん」という名前は、びよよんと長く伸ばした砂糖菓子を、金太郎飴のようにティンティントーン♪と包丁でリズミカルに切るときの、廣東語の擬音からきている。つまりそんな、どこにでもありそうな駄菓子なのである。真剣に探せば香港だけでなく、アジアのどの国にあってもおかしくなさそうだ。 その、甘くかわいく懐かしいお菓子に再会したのは、ある季節の変わり目の祝日だった。わたしは生活に密着した日常的習慣を知るべく、正しい香港好き外国人として、季節の儀式を手伝いにやってきた。供物を作るのが目的である。知り合いの香港人宅は、その下町的情緒を色濃く残す長沙灣にあった。友達は仕事でいなかったが、供物作りは彼女がいなくても家族が数人いれば滞りなく進む。 儀式は簡単なものだが供物を作る手順がやや複雑で、母親だけがその一部始終を知っている。香港でお供えモノはすべて燃やして天に届ける。当日もたくさんの供物がリビングに並び、わたしは見よう見真似で準備を手伝い始めた。 最初に2枚の厚紙、金色と銀色がプリントされたわら半紙を重ね、五千万香港ドル札を10枚、金地に赤い文字の薄紙を花びら状に置き、黄色地に赤い文字の紙、赤地に金文字の紙、カラフルな絵柄の紙、赤と緑の紙、再び黄色、そして赤、さらに観音様が描かれた紙と靴の絵。最後の絵は靴のほか、洋服だったりバッグだったり時計だったりといろいろなバリエーションがあった。 本来なら金の紙と銀の紙は、立体に折って供えるが、この日の供物は略式で簡単にしたものだった。わたしは母親のいいつけを守る小学生の子供のように、すべて言われたとおりに作業をして並べた。途中一部の供物が足りなくなって、近所のキオスクへ買いにも出かけた。香港的日常をひとつでも多く知りたいわたしとしては、最後まで真剣に見届けたく、そこで手を抜くわけにはいかないのだった。手順はデジカメにも記録している。こんな儀式を教えてもらえる機会は、何十回と香港へ通ったってほんの数えるほど。わたしにとっては本当に大切で貴重な体験なのだ。 手伝いを終え、おやつ&散歩がてら雲呑麺を食べに寄った茶餐廳(ちゃーちゃんてん=香港式喫茶店)の近所に、懐かしのお菓子を売るその店はあった。ここもまた、名もない小さなキオスクである。基本的にはケーキ屋らしいが、叮叮糖のほか、やはり砂糖を使った駄菓子の「舊糖葱油餅(がうとーんちょーんやうぺん)」があった。なんちゃって香港人の記憶の中では、同じようにとても懐かしい駄菓子である。これもまた少なくとも10年前には、ときどき見かける街角の小販でしか買えないお菓子だった。 叮叮糖には味が4種類あった。最初は珍しいマンゴ味だけ買うつもりだったが、せっかくの機会にほかの味を試さない手はないので、結局全種類を買って乱暴にばりぼりと食べた。甘いだけでなく、果物やチョコなどおまけフレーバー付きの叮叮糖。だけど、結局気に入って最後まで全部食べたのは最初に目をつけたマンゴ味だけで、1個につき約75円×3の出費をちょっと恨めしく思うわたしだった。 ![]() ![]() ![]() 写真上右から左下へ、 叮叮糖は、こうして4種類をクリップで留めて売っていた。一度は通りすぎたが、結局ぜーんぶ買ってしまう。 ついでにもうひとつ駄菓子を紹介。糖葱餅は、砂糖菓子とココナッツパウダーを春巻きの皮でくるんと巻いたお菓子。昔は小販を見つけるたび、走って買いにいった。なぜか売るのはほとんどが白髭じいだった。たかが駄菓子だが、彼らの技術に比べると、この巻き方はちょっとへたくそ。 供物に使う麗しの5000万香港ドル札。供物ひとセットにつきこれを10枚、ごおく香港ドル分ずつ入れる。ご先祖さまもさぞ使いでがあるだろう。 厚紙の上に金と銀、そして金地に赤文字の薄紙をこんな風に置く。この紙に関しては、花びら状の置き方がミソなんだとか。 これでひとセット終了。いちばん上に置かれたカラフルな靴は、纏足シューズだった。見た目にはとてもかわいいのだけど…。
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