「亜細亜くいだおれ」 April 17, 2001
タイのチョー水鉄砲

牛嶋さんのイラスト 牛嶋 直美
ウシジマ・ナオミ

からだの組成の87%がチューカでできているちゅーか。残りの13%はタイ、ベトナム、インド料理でできてるちゅーか。
バックナンバー


ソンクラーンを直前に控えたチェンマイは、油断もスキもなかった。

旧市街をぐるり取り囲むお堀の脇に、水鉄砲やバケツをもった子供達(じつは結構大人もいたりする)がずらっと並び、車に向かって無節操に水をかけまくる。車の中なら基本的に安心。とはいえ窓が少しでも開いていようものなら逃げ場がない分悲惨で、車内は水びたしである。

被害がないからと油断していると、車から降りるときに「ぴゅっ」とやられる。降りるときにも十分に心してかからねばならない。なにしろ精鋭たちの武器は本格的で、ホースやバズーカ水鉄砲(勝手に命名。ひたすらでかく、水の飛距離が抜群)を片手にどこにでも潜んでいるからだ。

ただしびしょぬれ覚悟なら、真っ向から応戦することも可能。水をかけても誰ひとり文句はいわないのだから、かけられ損で「ひーん」と泣くより、参加しちゃったほうが絶対おもしろいと思う。なにしろ、水をかける=祝福なのである。これも立派な「行」なのだ。

応戦も本格派になると、家族総出でトラックに乗って参加する。荷台に水をいっぱいにした大きなバケツを4つも5つも積みこみ、歩道の通行人に向かって水をかけまくるのだ。車であちこち移動しながら、しかも上からかけるほうが絶対的に有利と感じて見ていたが、これがそううまくはいかないのだった。信号待ちになるとほとんど無防備な状態で、集まってきた群衆からの集中砲火(水?)を浴び、荷台の隙間からはざあざあと洪水のように水を吐き出していく。

つまり、どっちもどっちなのである。なにしろ、有利に見えながら実はバケツが空になったらおしまいなトラック組と違い、路上組はお堀という永遠なる水源を確保してるのだから強いのは当たり前だ。

ソンクラーンはタイ暦の正月で、元旦は4月13日。現在タイでは3が日が連休で、とにかくその間は、そこかしこで水をかけまくる。現地のガイドの話では、本場はチェンマイ。バンコクでは3日間だけ注意すればほぼ無事に終わるが、チェンマイでは数日前から約1週間に渡って水浸しという。

今回わたしはお堀の前を車で移動中、何度もガラス越しの水攻めに遭った。窓越しなので、その分水の勢いに遠慮がないのだ。こちらはこちらで「濡れるはずがない」と油断しまくりなワケだから、びっくりして何度も車のなかでひっくり返りそうになった。

4月はタイの真夏。湿気も強く、暑さにほとほと疲れているところで、水をかけあうのはある意味とても発散できるのだろう。本当にみんな楽しそうだ。水をかけた上に、白いパウダーをふりかける祝福もある。さらにはそれを一緒にして、パウダー入り水を水鉄砲に入れるツワモノがいるので、ソンクラーン当日の服選びにはまじめに注意しなければならないのだった。

タイに着いてからずっと、同行者へ向けて、聞きかじりの「ソンクラーンに関する注意」をしつこいほどにしまくった。さらに、チェンマイでは車越しには水をかけられまくっても、ほとんど実害なく過ごせたわたしである。ナイト・マーケットで、名物のお菓子「カラメー」をゆっくり試食しても、あれだけ人がいるにもかかわらず、偶然ながら一度も被害に遭わなかった。

それが油断につながった。

滞在最終日。バンコクのサイアムスクエアで、ワールドトレードセンターから両手に荷物を抱えて出た瞬間、首を狙って「ぴゅっ」とやられた。キッと振り向くと、ファストフードを売るワゴン車のなかで、タイ人のお姉さんがニヤリ。ご丁寧にそれは、パウダー入りのぬるぬる水であった。うわ。乾いたら真っ白になるじゃん。よりによって黒い服を着てるときを狙わなくてもなあ。うううう。とか思いながら、ホテルへの帰路を急ぐ。次から、車には十分注意しよう。

しかしあれだけ「祝福」といわれても、いっても、わかっていても、なぜかどうにもやっぱりむかついてしまうのだった。結局、最後に心の狭さを露呈しまくってしまったわたしであります。






左:水かけ祭りの本場チェンマイのナイトバザールで見つけた郷土菓子「カラメー」。パンダンリーフで包んだ「カラメー」は、ココナッツ風味。

右:色とりどりの「カラメー」はフルーツ風味といわれたけど、実際には味がほぼ同じ。





カラメーが買えるスポット

Night Bazzar (ナイトバザール)
住所:Chang Khlang Rd. ※ターペー門から車で約5分

チェンイン・プラザを中心に屋台がびっしり並ぶナイト・バザール。ここで見つけたのが、チェンマイ風キャラメルの「カラメー」。ココナッツ、ドリアン、いちご風味といわれたが、どれを食べても似た味なのがご愛嬌。

※25ans、La vie de 30ans(いずれもアシェット婦人画報社刊)の2001年8月号にて、このときのチェンマイ取材(注:ソンクラーン取材ではありません。あしからず)の記事を書きます。文体がたぶんまるで違いますが、ぜひ見てくらさい。




before  back number list  next  new  home page

copyright(c) 1997-2003. USHIJIMA, Naomi all right reserved.