「亜細亜くいだおれ」 May 29, 2001
香港ベジタブル

牛嶋さんのイラスト 牛嶋 直美
ウシジマ・ナオミ

からだの組成の87%がチューカでできているちゅーか。残りの13%はタイ、ベトナム、インド料理でできてるちゅーか。
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香港で好きな料理は? と聞かれたら、たぶん「油菜」と答える。
飲茶するとき、粥麺専家(ちょっみんちゅんがー=粥と麺の専門店)でお粥や麺を食べるとき、茶餐廳のランチで、さらにレストランで中国料理を食べるとき、必ずわたしが注文する「あと一品」なメニューが、コレ。

廣東語で「やうちょーい」。ガイドブックなどではわかりやすく簡単に「青菜炒め」と訳される場合もあるが、本来「油菜」は、ピーナツオイルを入れたチキンスープ(あるいはお湯)で、茹でて食べる青菜のこと。好みでニンニクを加えたり、皿に盛ってからオイスターソースをかけて食べる。どこの店でも大抵オーダーできるが、あまりに当たり前すぎるせいか不思議とこの名前でメニューに載ることはあまりない。

油菜の材料として、最も一般的な青菜は「菜心」(ちょーいさむ)。これは中華圏で人気が高いアブラナ科の野菜。苦味はなく味そのものはまったく違うが、日本の菜の花に似た小さな黄色い花が特徴。

一見「菜心」に似てるが、もうすこし緑色が濃く、白い花を咲かせる野菜が「芥蘭」(がいらん)。これは特に茎の部分の歯応えを楽しむため、食感が似たブロッコリ(西蘭花 さいらんふぁー)に例えられることが多い。

中華圏でレタスは生食でなく、火を通して食べるのが一般的。「生菜」(さんちょーい)、あるいは「西生菜」(さいさんちょーい)の名で、やはり典型的「油菜」のひとつとして親しまれる。

「西洋菜」(さいよんちょーい)はクレソン、「韮菜花」(がうちょーいふぁー)は花ニラ、菠菜(ぽうちょーい)はホウレンソウ、「豆苗」(たうみう)はエンドウの芽とつるの部分、これらもすべて「油菜」メニューの素材になる。

日本で中国野菜としておなじみの「青梗菜」は、廣東語で小棠菜(しうとんちょーい)。日本のものよりかなり小さめで、意外にも「油菜」としては一般的でない。火を通すと鮮やかな緑色がキレイなので、茎の部分だけを高級料理の彩りとして使用する場合が多い。白菜もまたしかり。香港で「白菜」(ぱっちょーい)は、「白菜仔」(ぱっちょーいちゃい)のこと。親指長の小さな野菜で、形は青梗菜に似ているが、茎の部分はあくまで白。香港では、「油菜」でわりとどこでも食べられる野菜のひとつである。

日本の「白菜」は、香港でいうところの「大白菜」(だいぱっちょーい)、あるいは「紹菜」(しうちょーい)という。ちょっと種類は異なるが「津菜」(ちんちょーい)という、細長い白菜もある。これは天津白菜のことで、廣東語らしく縮めて「津菜」あるいは「津白」(ちんぱっ)と呼ばれる。ちなみに香港の麺料理にばさばさ入れる「冬菜」(どんちょーい)は、この津菜をニンニクで漬けたもの。台北の故宮博物館の展示で有名な翡翠の白菜も、正確にいうとこの「津菜」のこと。いや、これはどーでもいい話でした。

椰菜(いえちょーい=キャベツ)、唐好菜(とんほうちょーい=春菊)、韮菜(がうちょーい=ニラ)は、残念ながら「油菜」にはならない。また、「唐生菜」(とんさんちょい)はサニーレタス。同じように「油菜」にもなるが、「通菜」(とんちょーい=空心菜)同様、腐乳(ふーゆぅ)という豆腐を塩漬け発酵させた調味料と唐辛子で独特の味付けに。また、莧菜(いんちょーい=ヒユナ)は、ピータンや鶏卵、鹹蛋(はむだん=アヒルの卵の塩漬け)などと炒めて食べる。

A菜(えいちょーい)や、芥菜(がいちょーい)なんて青菜もあるが、これらは日本語で説明できないのでまたそのうちに。

香港人の友人から「ずっと質問されるから面倒くさい」とブーイングを受けるほど、一時期野菜調べにハマっていたことがあった。もちろん好きキライはある。でも、まだまだ「青菜調べ中」の身だし、どの菜心がいちばん好きかなんて決められなかった。しいていえば豆苗と唐生菜、それから韮菜花がすきなほうかな、という程度。

香港に住んでたある日、日本から来た友人を案内したときのこと。「世話になったお礼に」と、突然「菜心」柄のお皿をいただいた。「この青菜を見るとわたしの顔がだぶる」とのことだった。

滞在中一緒に食事したテーブルの上には、毎日必ずこの「菜心」がのっていたらしい。そういえば、粥にも麺にもぶっかけ丼ごはんにも「油菜心」(やうちょーいさむ ※菜心の油菜を略してこういう)は欠かせない。かもしれなかった。ちょっと複雑な心境だが、自分の食生活を思い返してみれば、確かにそれはある意味自然な話のような気がする。

「菜心」はビジュアル的にもかわいくて好きなので、プレゼントはとてもうれしかったが、もしかしたらそう思う友人が「他にもいたのかもしれない」と思ったら、すこしだけ恥ずかしかった。もちろん、今ではたいへんいい思い出なのでありますが。






写真上左:どうもわたしが大好きらしい菜心の油菜、油菜心。そういえば毎日食べても飽きない。

上右:芥蘭の油菜。見た目は菜心に似ているが、茎の食感がコリッと独特。緑色も濃い目。

下左:唐生菜(中国レタス)の油菜。シャキシャキした食感で、じつはわたしは生菜(レタス)よりこっちのが好き。

下右:これが問題の菜心のお皿。ちゃんとワラで束ねられてるところが憎い。大切にしてます。





油菜をたべるならココ

糖朝 (とんちぃう)
住所:香港九龍尖沙咀廣東道88號
電話:2375-9119
営業時間:11:30〜深夜0:30(金、土、祝の前日〜1:30) 無休

クルミのお汁粉、黒ゴマあん入り白玉団子、マンゴプディングなど、デザートでおなじみの有名店ですが、麺やごはんも食べられます。つまり、もちろん油菜も。 じつはメニューをチェックしていたら、この店だけがメニューに「油菜」と載せていたので、今回はこの店をご紹介することにしました。糖朝で食べられる油菜は、菜心か芥蘭がほとんどと思います。これは日によって変わることがありますので、ご了承くださいまし。

※メニューにある実際の名前は、「郊外油菜供蠔油」(がうんごいやうちょいごんほーやう)。郊外の野菜を油菜にしてオイスターソースを添えてあります、つー意味。

※他の店ではほとんどメニューにはありませんが、基本的に高級レストランでも下町の粥麺専家でもどこでも食べられるので、店で訪ねてみてください。ただし油菜(やうちょーい)の廣東語の発音は意外にむずかしいので、メモに書いて店員に見せることをオススメします。このとき「めっぃえちょーいあ?」(どんな野菜にしますか)と訪ねられるので、まずは菜心を。さらに次からは、芥蘭、唐生菜、韮菜花、白菜仔など、いろいろ試してみてくださいまし。




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