| 「亜細亜くいだおれ」 May 29, 2001 | |||
| 香港ベジタブル |
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香港で好きな料理は? と聞かれたら、たぶん「油菜」と答える。 飲茶するとき、粥麺専家(ちょっみんちゅんがー=粥と麺の専門店)でお粥や麺を食べるとき、茶餐廳のランチで、さらにレストランで中国料理を食べるとき、必ずわたしが注文する「あと一品」なメニューが、コレ。 廣東語で「やうちょーい」。ガイドブックなどではわかりやすく簡単に「青菜炒め」と訳される場合もあるが、本来「油菜」は、ピーナツオイルを入れたチキンスープ(あるいはお湯)で、茹でて食べる青菜のこと。好みでニンニクを加えたり、皿に盛ってからオイスターソースをかけて食べる。どこの店でも大抵オーダーできるが、あまりに当たり前すぎるせいか不思議とこの名前でメニューに載ることはあまりない。 油菜の材料として、最も一般的な青菜は「菜心」(ちょーいさむ)。これは中華圏で人気が高いアブラナ科の野菜。苦味はなく味そのものはまったく違うが、日本の菜の花に似た小さな黄色い花が特徴。 一見「菜心」に似てるが、もうすこし緑色が濃く、白い花を咲かせる野菜が「芥蘭」(がいらん)。これは特に茎の部分の歯応えを楽しむため、食感が似たブロッコリ(西蘭花 さいらんふぁー)に例えられることが多い。 中華圏でレタスは生食でなく、火を通して食べるのが一般的。「生菜」(さんちょーい)、あるいは「西生菜」(さいさんちょーい)の名で、やはり典型的「油菜」のひとつとして親しまれる。 「西洋菜」(さいよんちょーい)はクレソン、「韮菜花」(がうちょーいふぁー)は花ニラ、菠菜(ぽうちょーい)はホウレンソウ、「豆苗」(たうみう)はエンドウの芽とつるの部分、これらもすべて「油菜」メニューの素材になる。 日本で中国野菜としておなじみの「青梗菜」は、廣東語で小棠菜(しうとんちょーい)。日本のものよりかなり小さめで、意外にも「油菜」としては一般的でない。火を通すと鮮やかな緑色がキレイなので、茎の部分だけを高級料理の彩りとして使用する場合が多い。白菜もまたしかり。香港で「白菜」(ぱっちょーい)は、「白菜仔」(ぱっちょーいちゃい)のこと。親指長の小さな野菜で、形は青梗菜に似ているが、茎の部分はあくまで白。香港では、「油菜」でわりとどこでも食べられる野菜のひとつである。 日本の「白菜」は、香港でいうところの「大白菜」(だいぱっちょーい)、あるいは「紹菜」(しうちょーい)という。ちょっと種類は異なるが「津菜」(ちんちょーい)という、細長い白菜もある。これは天津白菜のことで、廣東語らしく縮めて「津菜」あるいは「津白」(ちんぱっ)と呼ばれる。ちなみに香港の麺料理にばさばさ入れる「冬菜」(どんちょーい)は、この津菜をニンニクで漬けたもの。台北の故宮博物館の展示で有名な翡翠の白菜も、正確にいうとこの「津菜」のこと。いや、これはどーでもいい話でした。 椰菜(いえちょーい=キャベツ)、唐好菜(とんほうちょーい=春菊)、韮菜(がうちょーい=ニラ)は、残念ながら「油菜」にはならない。また、「唐生菜」(とんさんちょい)はサニーレタス。同じように「油菜」にもなるが、「通菜」(とんちょーい=空心菜)同様、腐乳(ふーゆぅ)という豆腐を塩漬け発酵させた調味料と唐辛子で独特の味付けに。また、莧菜(いんちょーい=ヒユナ)は、ピータンや鶏卵、鹹蛋(はむだん=アヒルの卵の塩漬け)などと炒めて食べる。 A菜(えいちょーい)や、芥菜(がいちょーい)なんて青菜もあるが、これらは日本語で説明できないのでまたそのうちに。 香港人の友人から「ずっと質問されるから面倒くさい」とブーイングを受けるほど、一時期野菜調べにハマっていたことがあった。もちろん好きキライはある。でも、まだまだ「青菜調べ中」の身だし、どの菜心がいちばん好きかなんて決められなかった。しいていえば豆苗と唐生菜、それから韮菜花がすきなほうかな、という程度。 香港に住んでたある日、日本から来た友人を案内したときのこと。「世話になったお礼に」と、突然「菜心」柄のお皿をいただいた。「この青菜を見るとわたしの顔がだぶる」とのことだった。 滞在中一緒に食事したテーブルの上には、毎日必ずこの「菜心」がのっていたらしい。そういえば、粥にも麺にもぶっかけ丼ごはんにも「油菜心」(やうちょーいさむ ※菜心の油菜を略してこういう)は欠かせない。かもしれなかった。ちょっと複雑な心境だが、自分の食生活を思い返してみれば、確かにそれはある意味自然な話のような気がする。 「菜心」はビジュアル的にもかわいくて好きなので、プレゼントはとてもうれしかったが、もしかしたらそう思う友人が「他にもいたのかもしれない」と思ったら、すこしだけ恥ずかしかった。もちろん、今ではたいへんいい思い出なのでありますが。
![]() ![]() 写真上左:どうもわたしが大好きらしい菜心の油菜、油菜心。そういえば毎日食べても飽きない。 上右:芥蘭の油菜。見た目は菜心に似ているが、茎の食感がコリッと独特。緑色も濃い目。 下左:唐生菜(中国レタス)の油菜。シャキシャキした食感で、じつはわたしは生菜(レタス)よりこっちのが好き。 下右:これが問題の菜心のお皿。ちゃんとワラで束ねられてるところが憎い。大切にしてます。
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