「亜細亜くいだおれ」 June 12, 2001
目印はエビ餃子

牛嶋さんのイラスト 牛嶋 直美
ウシジマ・ナオミ

からだの組成の87%がチューカでできているちゅーか。残りの13%はタイ、ベトナム、インド料理でできてるちゅーか。
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周知のコトかもしれないが、香港の餃子にはニンニクが入ってない。しかも、街で出会うそのほとんどが「焼き餃子」ではなく「蒸し餃子」だ。

餃子を食べる機会は多い。レストランへ飲茶(やむちゃ)しに行けば、いろんな種類の餃子がちっこい蒸篭にぴょこんとのってくる。見た目もキレイで熱々の出来たてハフハフが、どこでも気軽に食べられる。もちろん詳しく書けば店によっては「北京餃子(ぱっきんがうじー)」などと書かれた、ちょっと油っぽい焼き餃子もある。専門店もある。が、香港式の餃子はあくまで蒸し餃子。しかも(これはあくまでわたしの考えだが)、その王道は「蝦餃(はーがう)」である。

先日、20代女性誌の編集をしている知人から「初めて香港へ行った読者が、気軽に食べられるオススメの一品」を聞かれ、反射的に「蝦餃」と答えていた。蝦餃は、名の通り蝦入り餃子のこと。飲茶の點心(でぃむさむ=点心)のひとつとして地元香港人も観光客にも人気のメニューである。

わたしが日本人の友人たちを見ている限り、「何はなくともエビ。エビ、エビ!」というエビ女が多かったこと、一度「蝦餃」を食べると次も必ず頼むことから、なんとなく「女性はみんな蝦餃が好物である」と、わたしの頭に刷り込まれていたらしい。

だから「なんでそれがオススメなの。理由は?」と改めて聞かれ、「はて」と、すっかり戸惑ってしまった。ほええ、理由? だって、みんな好きだったもん。初めて香港へ行ったときから。

「蝦餃」は、一種独特な餃子である。ぷりぷりパツパツのエビが、半透明のむっちりした皮でぽってりと丸く包んである。この皮は、小麦粉の一種である澄麺粉(つぃんみんふぁん=日本語では「浮き粉」)という粉で作られる。點心(でぃむさむ=点心)シェフから簡単に作り方を教わり、日本で浮き粉を手に入れ何度かやってみたが、浮き粉を熱湯で練ること、具を包むのに独特なコツが必要で、思うようにはできない。とにかく「新鮮な蝦が命!」だからと、わざわざ魚屋さんで車エビを買ってきたにも関わらず、味も見た目もイマイチでがっくりきた。

香港のレストランで、蝦餃は點心専門のシェフが作る。店によってレシピは多少違い、シンプルに蝦だけを使用する他、黄ニラ入りやタケノコ入りなど、蝦の旨みや歯応えを邪魔しない程度の副材料がコンビネーションとして使われるのが一般的だ。蝦餃という限り、やっぱりメインは蝦である。

個人的好みでいえば、蝦はすきでも嫌いでもない食材。だからこそ、エビの臭みや食感には厳しく対応する。エビ臭いのは×、食感がぷりっとしてないのも×、皮が乾いていてもべちゃっと水っぽくても×、熱々で出てこなければ×、火が通り過ぎても×。とにかく実際にやって失敗して、皮がむっちりとしてやわらかく、蝦はぷりぷり、適度な塩味と、エビ・皮双方の食感を上手に出すためには、かなりの技術が必要であることに気付いた。

シンプルな餃子だからこそ、材料が新鮮であることは不可欠。これすなわち蝦餃の、そしておいしいレストランには欠かせない極意である。蝦が新鮮でぷりっと締まり、天然塩の自然な甘味を楽しめ、適度な大きさと美しいフォルム。あらら、すべての料理に通じるじゃん。「蝦餃って、とてもえらい一品なのでは?」。なんだか気持ちが急に盛り上がった。

「蝦餃が美味な店は、食べ物すべてがおいしい。といっても過言じゃないの。いわば飲茶の、いやその店の料理の指針といってもいいくらい」。気がつくと、えらそうに電話で一席ぶつわたし。友人は「なるほど」と、心から納得した様子で満足気に受話器を置いた。

口からでまかせ状態でテキトーなことをいったけど、案外コレって言い得てるじゃん。と、我ながら。次から友人には、この手で香港のレストランを紹介しよ。






写真左:わたし的に香港で餃子の代表選手といえば「蝦餃」。これは灣仔にある「海都海鮮酒家」のもの。新鮮でぎゅぎゅっと締まった蝦の身がたまりまへん。噛むと、ぷりっぷりっと口の中で暴れる感じ。

右:店によって注文の仕方はいろいろだが、こういう紙ぺらんのオーダー式は「多少待っても熱々が食べられる」のが好評。メニューには装飾語がつき、だいたい五文字の麗しい熟語になって登場する。ちなみに「蝦餃」は、「晶寶鮮蝦餃(ちんぼうしんはーがう)」や「水晶蝦餃皇(そいちんはーがううぉん)」てな感じ。



蝦餃子がおいしい廣東料理店

海都海鮮酒家 (ほいとうほいしんちゃうがー)
住所:香港中環添美道1 中信大厦5樓
電話:2877-2211
営業時間:飲茶11:00〜14:30(日曜、祝日は10:00〜) ディナー18:00〜23:00

このコラムで何度か紹介してる店ですが、やっぱりここの蝦餃はピカイチ。ということは、つまり料理もおいしいわけです。具である蝦もうまうまだけど、噛んだときの皮のむっちりやわらか加減が好き。皮も実は重要です。ちなみに「蝦餃」は飲茶時のみ。




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