| 「亜細亜くいだおれ」 June 26, 2001 | |||
| うにゅふるぷりっ |
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「うにゅ」とか「ふる」とか「ぷりっ」とか。 とにかく、そういう感触がたまらなく好きだ。さわったときの手のひらの触感はもちろんだが、やはりなんといっても口の中で感じる「食感」が、何よりも重要である。 例えばわたしにとっての「うにゅ」は、韓国のトッポキ(甘辛い唐辛子味噌で炒めたおもち)や、香港の春節に食べる年糕(にんこう=赤くて甘いおもち)。「ふる」は、香港の蛋撻(だんたっ=カスタードタルト)のカスタードの部分と、広東省順徳のミルク揚げの中身。「ぷりっ」を代表するのは蝦餃(はーがう=エビ餃子)の中身、つまりエビである。なんてことをちょっと考えただけで、わたしのお腹がぐうぐうと騒ぎだすほど。 香りや味だけでなく、とにかくその「食感」がたまらなく大切。今週、おいしい夜ごはんを食べにいって、心の底からそう思ったわたしである。そのためには、「歯と舌と胃を健康に保たねば」と、なんだかとても真面目に考えてしまった。 きっかけはナマコだった。 香港で食べる高級な廣東料理には、魚翅(ゆいちー=フカヒレ)や鮑魚(ぱおゆぃ=アワビ)、燕窩(いんうぉー=ツバメの巣)、花膠(ふぁーがう=魚の浮き袋 ※魚肚ともいう。読みは、ゆぃとう)、そして海參(ほいさん=ナマコ)など、乾物が多く使われる。高級で珍味。ところが、これら乾物は鮑魚以外どの食材もほとんど味がないのだ。つまり、食感そのものを楽しむための珍味なのである。 フカヒレの「ぷるん」、やや硬めに「ねっとり」「くにゅん」としたアワビの食感にも負けず劣らず、そのナマコは「ぷるりん」と「ねっとり」「ふるふる」していた。これぞまさに「うにゅふるぷり」系の極み。と思った。 料理の名前は「發財一品■(ふぁっちょいやっぱんぽう ※■=保のしたに火)」。材料に、花膠(魚の浮き袋)、鮑魚(これは乾物ではなくリーズナブルなアワビの水煮)、鵞掌(んぉおちょん=鵞鳥の水かき)、花菰(ふぁーくー=どんこ)、髪菜(ふぁっちょい=砂漠の雨季にだけとれる藻)、そして海參(ナマコ)が使われていた。どれもが違った歯応えで、素材特有の香りもそれぞれに楽しめ、そのうちわたしの脳味噌はお祭り騒ぎになってしまった。なかでも特に脳を刺激したのが「ナマコ」だった。 その「うにゅふるぷりん」を口いっぱいにほうばり、前歯と歯茎に当たる食感を楽しみながら、ゆっくりとひとくちだけ噛みきる。舌で「ねっとり」を転がし、「ぷるりん」という歯応えと同時に「ふるふる」震える舌ざわりと口当たりを堪能。なんというか、口の中全部でナマコさんを歓迎してる気分だった。ああ。今思い出しても。意地汚く、いつまでも口の中に入れておきたかった。なんというしやわせな時間。ええい、止まれー。心のなかでずっと叫んでいた。他の誰もが次の野菜料理を食べ始めても、わたしはひとりマイペースでゆっくりとナマコさんを噛みしめていた。 翌日になってもその口福な味覚が忘れられず、思わずわたしは中国デパートへ海參を見に行った。 うーん。これ、だよなあ。ナマコは、相変わらず乱暴な外観の塊だった。でーんと主張して、ごろごろ瓶に詰まっていた。豬婆參(じゅうぽうさん)という種類のナマコ。他に婆參(ぽうさん)や白石參(ぱっしっさん)とも呼ばれる。トゲトゲがない種類で、マットな白味がかった灰色をしている。ナマコも外見じゃないんだなあと、乾物棚をじっと見つめながらわたしはしとり考えにふけってしまった。そして、もう一度これを食べるため、がんばって働こうと心新たに思うのだった。
![]() ![]() 左上から右下に。福臨門の「發財一品■(やっぱんぽう ※■=保のしたに火)」。なんといっても「上湯(しょんとん=日本でいうところの出汁)」の勝利と思います。 フォークでざっくり刺してもってるのが、大問題の(「おいしすぎて」です)ナマコ。「もうお腹いっぱい」とご辞退された方のナマコ一切れを、わたくしがいただきました。ぎゃー。神様を真面目に信じた瞬間。最初にひとつ、最後にひとつ食べました。 いつも思うのですが、この乱暴でがさがさした固い塊が、なぜあのように繊細な「うにゅぷり」になるのか。今回どーしても紹介したく、原稿を途中で中断して上海街へ赴き、しっかり撮影してきました。左が豬婆參で、1斤(600g)で320香港ドル。 「蝦子柚皮芥菜胆(はーじーやうぺいがいちょいたん)」。ザボンの皮の白い部分だけを、蝦の卵風味で煮こんだ料理。柑橘系の香りはなく、食感はホコホコ。やわらかいサトイモと大根を炊いたのを足して割ったような感じでした。蝦子がいっぱい使われてるので、生臭いのが苦手のしとはやめたほーが無難です。「ナマコを初めて食べた人の勇気」も称えたいが、沙田柚(さーてぃんやう=ザボン)の皮をこんな立派な料理にしてしまった料理人を、わたしは心の底から尊敬します。味も珍品。
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