| 「亜細亜くいだおれ」 August 7, 2001 | |||
| ぷるぷるふたたび |
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というメールをチェックしたのは、確か6月末のこと。丁度香港出張中でうれしく読ませていただいたのだが、これがまた運悪く持ち歩いてたラップトップが、断末魔の悲鳴をあげる直前。PC音痴のわたしは、「万一のための準備」を何もせずにいたのだ。そして、とにかくそのメールを読んだ当日だか翌日に、仕事もプライベートもぜーんぶ詰まったラップトップさんはぷすんと死んでしまった。 内容がうろ覚えな「言い訳」にして恐縮だが、確かそのメールはニューヨークにお住まいの方から。いつもチャイナタウンで食べてらっさる、ご自分もお気に入りの「ぷるぷる」、つまり「腸粉」(ちょんふぁん)を再び取り上げて欲しいという内容だった。…でしたね、確か。 丁度廣州行きを控えていたわたしは、たまたま香港人の友人と打ち合わせをしていて「上九路に腸粉の専門店がある」ことを聞きつけた。「これだ」と、心のなかで小躍り。いつも思うのだが、香港では目指す食べ物の情報がものすごいタイミングでやってくる。よっぽど相性がいいのか、ただ単にいつも食べ物のことしか考えていないということなのか、どちらなのかわたしにはわからない。 腸粉というのは、米粉を水で溶き少量のピーナツ油を加えて、独特の四角い蒸篭で蒸しあげたもの。イタリアでいうならパスタのひとつ。って、例えがへんか。 北京など華北の小麦に対し、華南では主食に米粉が使われること多数。腸粉もそのひとつである。知らない人には「お米の蒸しクレープ」と伝えることが多い。 ただ、するってーとあの独特のぷるぷるした食感まではなかなか伝わらず、その食感こそが腸粉の魅力なので困ってしまうため、腸粉を「ぷるぷる」と擬音で呼んだりするわけだ。 決して立派な店ではなく、日本人的視線だと屋台に毛が生えた感じ。けれどもさすがは専門店で、メニューも客が食べているのもほとんどが腸粉。いや、そりゃ当たり前か。 周囲のテーブルをぐるりと見渡して、どうも一番人気らしい「牛肉腸粉」(あうよっちょんふぁん)を注文する。それと、炸両(じゃーりょん=お粥にも浮かべる油條という揚げパンを腸粉でくるりと巻いたもの)。でんぷんは、わたしの大好物である。 作る様子をぢっと凝視していると、わたしの刺すような視線に気づいた店員がちょっと恥ずかしそうにした。店はところどころ汚れているが、米粉を扱う手馴れた様子はとても美しく見える。瞬時に蒸しあがる腸粉を中華包丁で器用に巻き上げ、タンタンタンッとリズミカルに切り分ける。思わず拍手をしそうになった。 腸粉は、5分と待たずにやってきた。 箸で持つとくずれるほどやわらかく、口に入れると、それはもうぷるぷる。 というより、どっちかというと、ふるふるに近かった。香港で食べる一般的な腸粉よりもずっと薄く、ぺらんぺらんとしている。舌触りは繊細で、ねっとりと滑らかである。たぶん、高温で一気に蒸しあげるその独特な調理法、強い火力と優秀な専用蒸篭のせいと思うが、それが5元(約75円)とは思えない、また十代に見える若い女の子ちゃんが作っているとは信じられないほどリッチな味わい。 全国の「ぷるぷる」好きに、いつかは味わってほしい極上の腸粉である。 ただし、炸両の油條は油のにおいがイマイチ。たまたま作りおきだったせいか硬く、わたしの歯では噛み切れなかった。そこでわたしたちは、無理せず油條は残すことにして腸粉だけぷるんとむいて食べた。 廣東語しか通じず(北京語はイマイチ通じにくいです)、店員にサービスという概念は皆無のこの店でないと、しかもアツアツでけたてでないと究極のぷるぷるのおいしさを堪能できないかと思うと、それはとても贅沢な味であると実感する。 余談だが、「あの蒸篭が欲しい」といつもの病気が出たわたし。しかし「持って帰れないでしょ」と交渉はばっさりと却下されてしまい、かなり寂しい思いをした。欲しかったなあ。 ![]()
写真左上から右下に:九王冬幕酷腸粉(がううぉんどんくーあうよっちょんふぁん)。牛肉入りのぷるぷる。これはサイズ「大」で、一皿5元(約75円)。 炸面腸(じゃーみぇんちょん)。油條をぷるぷるで巻いたもの。一皿3元(約45円)。香港では炸両といいます。 手前にある揚げパンが油條。お粥にも入れるし、豆乳に漬けて食べたりします。右の大きな器に入ってるのが、ぷるぷるの材料。 手元を盗み撮りしました。2本の中華包丁で極薄ぷるぷるを器用に巻き上げ、タンタンタンッと切り分けます。その音もまたおいしーです。
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