「亜細亜くいだおれ」 August 21, 2001
除熱のお茶

牛嶋さんのイラスト 牛嶋 直美
ウシジマ・ナオミ

からだの組成の87%がチューカでできているちゅーか。残りの13%はタイ、ベトナム、インド料理でできてるちゅーか。
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「除熱気」(ちょーいいっへい ※あるいは「去熱気」ほいいっへい)は、夏の香港で毎日聞かれる、まるで挨拶のような日常的言葉。意味は文字通り「熱を取り除く」こと。

亜熱帯気候の香港では、特に熱が体に溜まりやすい。さらに漢方の考えで、「熱気」は体に様々な悪さを引き起こすため、なにか大変なことになる前にその熱を取り除くという習慣があるのだ。

今年の猛暑は、日本で「熱中症」という困った言葉を一般的にしたけれど、さらに高温多湿なはずの香港で、それに準じる言葉をなぜかわたしは聞いたことがない。たぶんその予防がごく一般的な家庭内の、あるいは個人的レベルで徹底しているからではないかと思うのだ。わたしが見る限り、日本の冬の風邪対策よりもずっとずっとそれは身近なのである。

香港人の考えを具体的にいうと、こんな感じだ。

「熱気」が体に溜まると、ニキビや吹き出物、イライラ、偏頭痛、だるさ、肩凝り、喉の腫れなど、とにかくまず体に「いやな症状」を引き起こす。これを無視して何の対策も立てなければ、あんな高温多湿のなかではたぶんすぐに熱中症を起こし、貧血や脱水症状で倒れたりするのだろう。でも、まずそんなことにはならない。

香港の人々は体の「熱気」にとにかく敏感である。体が「熱いな」と思った瞬間、ほとんど反射的に何らかのアクションを起こす。例えば涼茶舗(りょんちゃーぽう)という漢方茶スタンドにかけ込んで涼茶を一杯立ち飲みしたり、龜苓膏(くゎいれんこう=亀ゼリー)を食べたり。もっと注意深い人なら、冬瓜(とんぐゎー=トウガン)や涼瓜(りょんぐゎー=ニガウリ ※苦瓜ともいう。読みは、ふーぐゎー)のスープや料理に舌つづみを打つという日常的医食同源で、熱気を感じる以前に予防をしてしまうのだ。いずれの食材にも、「除熱気」の効果がびしばし。

この夏、40度を超える灼熱のサーキットでの炎天下ロケや、冷房のないジムでのトレーニングで貧血を起こしかけ、「体に熱気が溜まる恐怖」を身をもって体験したわたしは、早速「除熱気」を日々実践することにした。30度を超える日には、ニガウリやトウガン、キュウリ、豚肉、中国茶、涼茶など、「除熱気」なものを積極的にとるようにしている。スタミナがつくと人気のニンニクとニラは、確かに滋養にはなるのでいいのだが、いずれも体を温める「熱の食べ物」なので、暑い日の食べすぎにはご注意くらさい。

ところで、香港の街角で簡単に「熱を下げられる」涼茶(りょんちゃー=漢方茶)は、菊花茶(ごっふぁーちゃー)、五花茶(んーふぁーちゃー)、金銀花茶(かむんあんふぁーちゃー)、酸梅湯(しゅんむいとーん)、二十四味(やーせいめい)、感冒茶(がんもうちゃー)。わたしにはどれもお気に入りの味だが、後者の2つはかなり苦いので漢方薬の味と匂いに慣れてない人だと飲めない場合も。その他の4つは甘みがあり、ジュース感覚で気軽に飲める。

涼茶は種類によって「凍」(とん=冷たいの)と「熱」(いっ=熱いの)がある。いずれも効能には変わりがない。つまりこれら6つの涼茶には、冷たくても熱くても、同じように「体の熱を取り除く」効果があるのだ。わたしがいつもおもしろいなあと感じる、漢方の不思議である。




左:感冒茶は、風邪の引き始めに飲む涼茶。体の熱をとる他にも風邪の諸症状を緩和する薬効があるので、他の涼茶よりも値段がやや高め。かなり苦いです。

右: 街角のスタンドではこんな風に涼茶を売る。これは郊外の元朗(ゆんろん)という街で見つけた涼茶舗。お碗に入っているのは温かい涼茶だけど、ぬるいことが多い。熱いのが飲みたいときは、「要熱?」(いういっげ=熱いのにして)といって、新しいのを注いでもらってくらさい。手前の二十四味は苦いが、奥の五花茶は甘くて飲みやすい。見た目はほとんど同じです。


気軽に立ち飲みできる涼茶舗

涼茶第一家 (りょんちゃーだいやっがー)
住所: 九龍尖沙咀加拿芬道41號
営業時間: 10時〜23時 無休

香港の主要な繁華街に支店がある涼茶舗。この店の他にもたくさんあるので、見かけたらぜひ寄ってみて。暑い日には、とにかくぐいっと一杯。自分で簡単に涼茶を作れるお土産セットもあるので、お好きな人はぜひ。

おことわり
※カッコ内のひらがなは、廣東語をわたしの耳に聞こえた発音で表記しています。語尾の微妙な「k」「t」「p」などは、てけとーにやってます。また廣東語には9つの音があって、このまま読んでもまず通じません。そのへんは、どうぞご了承くらさい。



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