「亜細亜くいだおれ」 October 02, 2001
麺は個性で食べる

牛嶋さんのイラスト 牛嶋 直美
ウシジマ・ナオミ

からだの組成の87%がチューカでできているちゅーか。残りの13%はタイ、ベトナム、インド料理でできてるちゅーか。
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香港のスープ麺は、昼ごはんやおやつに人気があり、それは街中どこにでもある麺専家(みんちゅんがー=麺の専門店)や茶餐廳(ちゃーちゃんてん=香港式の喫茶店)で食べる。

器の大きさは、日本のラーメン丼の約半分。注文すればすぐに出てくるお気楽メニューで、量やその気軽さを考えると、なんとなくラーメンよりもファストフードの感覚に近い気がしている。わたし自身も、「しっかりごはん」というより、ちょっとお腹がすいたときのおやつに食べることが多い。

そんな気軽で簡単なはずの香港の麺世界に、ちょびっと面倒を強いられる店がある。それが、車仔麺(ちぇーちゃいみん)店。

店内のカウンターには何十種もの具がずらずらっと並び、客はその膨大な数の中から、具の種類と数を決め、さらには麺までも自分で選んでオーダーしなければならない。店によってさまざまとはいえ、最低でも麺が10種類から並んでいる。

香港人の友人にいわせると「好きなものが選べるんだから合理的」。確かにそれも一理ある。けど、全部の膨大なる組み合わせは想像をはるかに越える天文学的数字になるわけで、慣れない外国人客にこのオートクチュール麺は、ちょびっと面倒というか敷居が高い。例えば「麺はどれでもいい」は許されないし、「あれもこれもいいけどどうしよう」と優柔不断になっていたら、後ろからがんがん抜かされてしまい、たかがおやつのスープ麺一杯をいつまでたっても食べられないことになる。

しかしそれは、わたしがいつでも「あれもこれもぜんぶ食べたい」から困るだけのことかもしれない。具も麺も、サンプルは目の前に並んでいるわけで、廣東語のメニューが読めずに困ることもないから、人によっては指先確認できるこの方式のほうが楽だろう。膨大な具と麺の種類を前に「あわわわ」と慌てずにさえいられれば、却ってわかりやすいはずだ。

代表的な麺は、大きく分けて小麦麺と米粉麺の2種類。

小麦麺は、粗麺(ちゃいみん=太いかんすい入り麺)、油麺(やうみん=揚げ麺)、牛奶麺(あうないみん=クリーム入り麺)、幼麺(ようみん=まっすぐで細い麺)、公仔麺(ごんちゃいみん=インスタントラーメン ※香港の人気ブランドは出前一丁(ちょっちんやってぃう)、烏冬(うーどん=うどん)、伊麺(いーみん=卵入り小麦麺)など。

米粉から作る麺は、河粉(ほーふぁん=平たくて太いやわらか麺)、米粉(まいふぁん=中くらいの丸い麺)、瀬粉(らいふぁん=太くて丸い麺)、米線(まいしん=細い麺)、銀針粉(んあんじゃむふぁん=太くて短い麺 ※そのカタチから、わたしはこれを「むし」と呼んでいる)。

このなかから1種類を選んだ後、具を3種類ばかり頼んでのせてもらうのが、わたし的オーソドックスな車仔麺の注文法。これが、選ぶ麺と具の組み合わせによって、まったく違う麺になってしまうからおもしろい。

例えば、粗麺に牛腩(あうなむ=牛バラ肉の煮込み)、鶏中翼(がいちゅんいえ=鶏手羽中のロースト)、蘿白(ろーばっ=スープで茹でた大根)を合わせると、なんとなく「香港の昼ごはん」っぽい、お腹にずっしり溜まる一品になる。

河粉に墨魚丸(まっゆいゆん=イカ団子)、魚皮餃(ゆいぺいがう=魚の練り物を皮にした餃子)、魚片(ゆいぺん=さつま揚げ)を選ぶと、香港風のタイ式スープ麺。車仔麺の場合、丼が普通の麺の器よりかなり大きいけれど、わたしの場合この組み合わせはおやつにすることが多い。

また、公仔麺に午餐肉(んーちゃんよっ=スパム)、煎蛋(ちんだん=目玉焼き)、蟹柳(はーいらう=カニカマ)をのせたら、日本人的感覚ではものすごくジャンクなインスタントラーメンになる。はずなのだが、この3種類の車仔麺では、このインスタントラーメンの金額がいちばん高い、というのがこれまた香港の摩訶不思議。

「平均的でなければ」とか「みんなと一緒にする」、なんて意識はほとんどない香港では、たった一杯の麺にも個性が光るのだ。なんとなく、この車仔麺がいちばん香港っぽい麺という気がするわたしである。

ところで、車仔は屋台の車のこと。昔、「車仔麺」が屋台で売られていたことから、現在もこの名で呼ばれている。




車仔麺をセットで頼むとこんな感じ(下記の店とは異なります)。選んだ麺は幼麺、具はちょっと多めの5種類で、辣辣魚蛋(らーらーゆいだん=辛い魚団子)、豆腐ト(たうふーぽう=香港風のサイコロ型の油揚げ)、香煎午餐肉(ひょんちんんーちゃんよっ=こんがり焼いたスパム)、炸魚皮(じゃーゆいぺい=川魚の皮を揚げたもの)、生菜(さんちょい=レタス)。左の飲み物は、香港式のミルクティー(セイロン紅茶+中国茶+エバミルク)。セットの合計で、35香港ドル(約500円)でした。




車仔麺が食べられるお店

極之好粥麺茶餐廳 (けっちーほうちょっみんちゃーちゃんてん)
住所:香港旺角豉油街21C
電話:2780-2629
営業時間:24時間

朝方ほんの1時間だけ清掃のためにお休みする、ほぼ24時間営業の車仔麺専門店。注文は、オーダーシートに書き込む方式。メニューの名前はちょっとむずかしいので、わからない場合は、目の前に並んでる麺と具を指差してオーダーして。

おことわり

※1香港ドル=約15円です。
※カッコ内のひらがなは、廣東語をわたしの耳に聞こえた発音で表記しています。語尾の微妙な「k」「t」「p」などは、てけとーにやってます。また廣東語には9つの音があって、このまま読んでもまず通じません。そのへんは、どうぞご了承くらさい。



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