「亜細亜くいだおれ」 January 01, 2001
香港でも冬は鍋

牛嶋さんのイラスト 牛嶋 直美
ウシジマ・ナオミ

からだの組成の87%がチューカでできているちゅーか。残りの13%はタイ、ベトナム、インド料理でできてるちゅーか。
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あまりのさぶさに憂鬱な東京の日々。風邪のせいもありますが、今年はなんだか本当に北風が骨身に染みます。ぶるるるる。けど、そんなときこそ冬場ならではのお楽しみを。

やっぱアツアツの火鍋(ふぉうぉ=香港風の鍋のこと)や油まみれの臘腸(らぷちょん=腸詰)は、木枯らしがぴゅーと吹いた日にこそおいしい、この季節こその醍醐味。「火鍋は暑い夏を乗り切る滋養食」なんて説もありますが、それはそれということで夏場になったらその意見を復活させることにしましょう。よーするに、さぶさも暑さも自然からの贈り物というわけです。

さて、冷えた身体をあっためるもの、といってわたしの脳裏に浮かぶのは、やっぱりお鍋。ひとつは、香港風しゃぶしゃぶの火鍋。そしてもうひとつが、ポウチャイ料理です。

火鍋のスープでわたしが特にすきなのは、莞茜皮蛋湯底(ゆんさいぺいたんとんだい)。これに香港の硬めの豆腐を最初からありったけ全部入れて煮立たせます。 莞茜(ゆんさい=コリアンダー)とピータンの出汁はおいしいけど、ちょっとクセがある。それが、豆腐を入れることでちょっとまろやかな香りになるのです。ちなみに豆腐はあとですっかり食べますが、感覚としてはあくまで出汁の一部です。

具は好みでいろいろ使いますが、弾力の強い墨魚丸(まっゆぃゆん=イカ団子)、ややねっとり感が残りながらも歯ごたえがほこほこにやわらかい茘芋(らいうー=タロイモ)、煮るとぺちゃんこになる独特な生根(さんこん=小麦粉のグルテンを揚げたもの)は、絶対欠かせないお気に入り。火鍋を終えた後の、コクのあるスープがこれまたたまらなく、そんな小さなひとつひとつを思い出していたら、なんだか気持ちがぽかぽかとあったまってきました。だけどもこれって、実はごはんというより食欲がえらいってことなのかもしれません。

ポウチャイは、■仔(■=保のしたに火)と書き、廣東語で土鍋のこと。日本では土鍋といったら鍋の代名詞のように感じますが、香港の火鍋はステンレス製の専用鍋でやります。厳密にいえばその限りではないけど、香港でポウチャイ料理といったら、火鍋ではなく基本的に土鍋煮込みのことを意味します。またこのポウチャイでごはんを炊くと、ポウチャイファンという名前になり、これもまた冬場の人気料理のひとつです。

秋の上海蟹が終わる頃になると、街のあちこちに大量の臘腸や油鴨(やうあっぷ)など、臘味(らぷめい)と呼ばれるお肉の加工品が山積みになります。油鴨はぺったんこにつぶれたアヒルのことで、壁にきっちりみっちり並び、慣れない外国人観光客にとってはなかなかグロテスクな光景。ですがあのダイナミックな景色は、香港人の食欲をそそる季節の風物詩なのです。

あの壁にずらっと並んだぺったんこアヒルを食べてみたい、という人はポウチャイ料理でどうぞ。「茘芋油鴨■(らいうーやうあっぷぽう ■=保のしたに火)」は、油鴨のうまみがじんわりしみたタロ芋が美味な、土鍋煮込み料理。ポウチャイファンのメニューに「油鴨」の文字があったら、ぺったんこアヒル入りの意味なので、ぜひ一度試してみてください。

写真:茘芋油鴨■(らいうーやうあっぷぽう ■=保のしたに火)。油鴨は、身そのものより、油まみれの香りとそのエキスを楽しみます。ポウチャイファンもなかなか美味ですが、くどいのが苦手な人にはあまりオススメできません。




ポウチャイ料理、臘味飯のお店

泉章居飯店 (ちゅんちぇんごーぃふぁんでぃむ)
住所:香港銅鑼灣波斯富街108-120號
電話:2577-3833
営業時間:11時〜24時

塩■鶏(いむごっがい=鶏肉の塩がま ※■=火へんに局)など、客家(はっか)料理で有名なレストラン。ですが、廣東家庭料理にも定評があります。

4人分を想定した冬場ならではのおすすめメニューは、生炒糯米飯(さんちゃうのーまいふぁん=生米を炒めて炊き込んだおこわ)、茘芋油鴨■(■=保のしたに火)、蛇羹(せいがん=蛇入りスープ)など。ただし臘味系の料理は結構油っぽくくどいので、これに油菜(やうちょい=茹でた青菜)と、清蒸桂花魚(ちんちぇんくゎいふぁーゆぃ ※スズキ科の魚の蒸し物←クセが少なくリーズナブル)などを頼むとバランスがいいです。


おことわり

※1香港ドル=約15円です。
※カッコ内のひらがなは、廣東語をわたしの耳に聞こえた発音で表記しています。語尾の微妙な「k」「t」「p」などは、てけとーにやってます。また廣東語には9つの音があって、このまま読んでもまず通じません。そのへんは、どうぞご了承くらさい。




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