| 「亜細亜くいだおれ」 January 01, 2001 | |||
| 骨肉相はむ肉骨茶 |
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肉骨茶と書いてバクテー。シンガポールを代表するもうひとつの朝ごはん、「骨付き豚肉入り漢方スープ」である。 中国語圏での食事がどっぷり日常になると、スープやらデザートに使う「茶」という表現は、「スープ状、液体状のもの」、さらにメニューに「肉とついたら豚使用」と自動的に翻訳されて脳に届くわけだが、初めてこの文字に触れる人なんかだと、「なぜお茶なのに肉が入ってるのかぁぁ」「肉といったら豚肉だけなのかいっ」「名前がこわいよぅぅ」など、楽しく混乱できるそうだ。ともだちの反応を見てると結構笑えるが、その驚きは新鮮でちょっとうらやましい。 さて、時は昔。 暑い国シンガポールの港町で汗水たらして働くみなさんが、習慣により一日2食の「すもうとり」な食生活だった頃のはなしだ。朝の元気の源、そして体力維持のためにもりもりがっつり食べる、安くて簡単で、ボリューム満点の朝ごはんに「肉骨茶」という屋台料理ができた。暑くても、湿気が高くても、どんなに労働でへとへとでも、香辛料と生薬、ニンニクで食欲が増進、肉のエキスが体力維持に貢献したそうだ。使う生薬は、甘草、ういきょう、桂皮、八角、黄耆など。確かに、中医学的に見ても全身の代謝をよくするすぐれものレシピだ。すぐに人気が出て、一気に広まり今にも至る、というのは当たり前のような気がする。 「そういえば、香港にもそんな屋台料理から発展した燒鵝(ガチョウのロースト)があったなあ。港じゃないけど、あっこ(深井村=しゃむつぇん)も海辺の町で、高速道路を作る人たちが対象の、そもそもは潮州屋台だったなぁ」とぼんやり思っていたら、バクテーもまたしかり。潮州に成り立があるという。うわ。潮州のみなさんてば、働きものだし、グルメで、わたしのお気に入りの味覚によくまぁかかわってきやがるもんだなぁと、しみじみうれしく思うのだった。やっぱ、そのうち一度いかなくちゃなー。 スープの表面からごろんごろんと飛び出る骨付きの豚肉、香りからわかるほど大量の黒コショウ、テーブルに碗が置かれる前からぷんっと匂う驚きのニンニク使用量。見た目もワイルドで魅力的、かつ黒コショウとニンニクは鼻腔を奥の奥までピシピシと刺激し、脳に「すぐ食べろ」と瞬時に指令を出してくる。うむむむ、確かにおいしそうだ。いや、まじうまい。そして、食べた瞬間汗腺開きっぱなしで、汗がほおを伝って線になって流れてくる。頭からポワポワと湯気が出そうだ。 今や「介護疲れ」を理由に日々なるべくぼんやりと暮らし、ていうか、そもそも肉体をあまり使わず代謝が滞りまくりのぐうたら労働者に、「朝からコレってどうなわけ?」。バクテーを前に瞬時に悩むのも確かだが、食べればその不安は一気に解消。一気に全身を血がかけめぐるのだ。じつは代謝が滞って「食べられなぁい」と悩む人にこそ、勧めたい朝ごはんである。 基本的に、肉は出汁がら。漢方スープをおいしく飲むための手段である。あくまでごちそうは生薬と肉を煮込みまくったスープの方だ。さらにこいつをひと口すすれば胃の粘膜が刺激され、ボウル一杯など簡単にたいらげてしまう(この日、おかわりはしませんでしたが)。 汗をひどくかくので、タオルと鏡は必ず持参のこと。それでも化粧や髪型は多少くずれるが、その後はホントに、心からすっきりする。わたしの感覚では「毒素が出る」ような感じだ。好みにより唐辛子を入れて食べるが、おいしいけどかなり辛味が増してさらに汗をかくし、わたしのように胃が弱め(ホントです!)だと、きゅううううとか刺激で収縮が起きるので、使用はホドホドに。 同じスープで煮込んだ青菜やしいたけをつまみながら、その滋味感にうっとり満足していると、どうもここんちのバクテーには日本の鰻屋のたれのような、なにか歴史的秘策があるらしいとシンガポーリアンBさんから耳うちされた。食べるのも大切だが、そのはなしがあまりに気になって、ひとり席を立ち、にこにこしながら店の奥へ入り、いきなり店主に聞いた。 「ねね、おいしさの秘密はなぁに?」 わたしの廣東語で細かいはなしは聞けなかったが、それで十分だった。唯一大きな秘策は「スープはオープン以来継ぎ足し」というもの。「鰻屋のたれ」に匹敵するはなしは、コレだったのだろう。おもしろかったのは、一緒に煮込むスパイスや生薬の量、それから煮込む時間と火加減は、その日の気温や湿度、豚肉の状態なんかでてきとーに替えるらしいこと。つまり、店主自身が秘策ということだ。やっぱ職人ってすごいな。 自分流バクテーは家でも簡単にできる。スーパーや薬局で肉骨茶のモトを買ってきて、ニンニクと骨付き豚肉をただひたすら寸胴で煮込むだけだ。 今日も日本は35度を軽ぅ〜く超えそうな暑さ。台風のせいか湿度も高くて、イライラは最高潮である。仕事をするのに仕方なくエアコンをつけるが今度はこれが効きすぎで、足はヒンヤリして、朝から晩までむくみっぱなしだ。仕方ない。こないだ買ってきたバクテーのモトを使って今晩から仕込み、明日はもうひとつのシンガポール風朝ごはんとしゃれてみっか。 写真は左上から:オリジナルの肉骨茶。一杯S$5(約)。器の向こうにあるちっこい皿の黒い液体は老抽(色づけ醤油)で、肉につけて食べる。甘めのとろっとした色の濃い醤油。わたしは、肉は老抽をつけずにそのまま、白いごはんにスープをざばざばかけて食べるのがお気に入り。他には、豚のシッポ、レバー、空心菜、シイタケのスープが人気。 ちびっこい器で濃いお茶を飲む工夫茶も潮州風の習慣。テーブルにつくと、マッチ箱ほどの袋がぽいっと置かれる茶葉で、自分達でお手前を楽しむ。中央右の油條(揚げパン)は、碗にぽいっと入れスープをしみしみさせて食べる。 となりの席にいたローカル客。功夫茶を扱う手つきがとても自然で、すごくおいしそうにすすっていて、思わず見とれる。やはり頭からぶわっと汗をかきながらバクテーをたいらげた。 皮ごとぶちこむ大量のニンニク。これもひとつの味の決め手。 ![]() ![]() 黄亜細肉骨茶(うぉんあーさいよっぐゎっちゃー) Ng Ah Sio Pork Ribs Soup Eating House 住所:208 Rangoon Road 電話:6294-7545 ※ひらがなは廣東語読みです。 1960年創業というバクテーの老舗。しゃれっ気の少ない店内は、通勤前の朝ごはんをとる客でいっぱい。シンガポール旅行中に「暑さにやられて」とか「ちょっと疲れたな」と感じたときは、ワイルドな朝ごはんで元気になりませう。 |
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